ウィリアムズ症候群患者を対象として、手の反応と目の移動の両方で測定した結果、正常であることが判明した倒置顔に向けられる注意の指向性
Intact attentional orienting towards inverted faces revealed by both manual responses and eye-movement measurement in individuals with Williams syndrome.
平井 真洋(1,2), 松村 友佳子(1), 水野 誠司(3), 倉橋 直子(3), 倉橋 宏和(3), 中村 みほ(1).
Author information:
(1)愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
(2)自治医科大学先端医療技術開発センター
(3)愛知県心身障害者コロニー中央病院小児神経科
J Intellect Disabil Res. 2016 Aug 1. doi: 10.1111/jir.12318.
背景:
ウィリアムズ症候群患者は顔を見る際に注意の特性が非定型であることを示す。ウィリアムズ症候群においては顔の構成プロセスが非定型であることが報告されているが、視覚的注意を獲得する際に特徴情報の構成や一部分を利用することが比較的に優れているかどうかは明らかではない。これまでに我々は、対象とは無関係な人の正立顔に対する注意の獲得が、反応の測定方法によって異なることを報告した。ウィリアムズ症候群患者において対象とは無関係な人の正立顔に対する場合、目の移動は視覚探索の後段における注意の特性がわずかではあるが非定型であることを反映する一方、手の反応は非定型な注意プロフィールを捉えていない。我々は顔の構造的情報に対する感受性がウィリアムズ症候群の注意を引きつけることに必要かどうかを評価するために同じ実験パラダイムを利用した。
手法:
ウィリアムズ症候群患者17人と正常に発達した子どもと大人34人が注意を散らすために倒立顔を用いた視覚探索課題に取り組んでいる間に、目の移動手の反応の両方を調査した。課題の測定(反応時間と実行の正確性)と凝視行動(最初の注意の方向と固視持続時間)を各刺激に関して分析した。
結果:
対象と倒立顔が同じ探索配列に表示された時点で、ウィリアムズ症候群患者の反応時間と正確性は正常な対照群と同じ傾向を示した。課題と固視計測結果を分析したところ、倒立顔に向けられた注意の方向は非定型ではなかった。
結論:
我々の以前の研究ではウィリアムズ症候群患者は倒立顔に対する固視行動は非定型であることを示していたが、顔が上下逆になっているとこの異常な行動は消える。この発見は局所的な特徴情報(例えば目)だけでは顔に対する注意を高めることには貢献しないことを示唆しているが、少なくとも現時点の実験パラダイムにおいて、構成情報はウィリアムズ症候群患者が顔に注意を引きつけられることに必用であるようにみえる。
(2016年8月)
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