ウィリアムズ症候群における前頭前野の神経細胞密度は減少している



Neuron density is decreased in the prefrontal cortex in Williams syndrome.

Lew CH(1), Brown C(1,)(2), Bellugi U(3), Semendeferi K(1).
Author information:
(1)Department of Anthropology, Social Sciences Building Rm. 210, University of California, San Diego, 9500 Gilman Drive, La Jolla, CA, 92093.
(2)Graduate Program in Neuroscience and Behavior, Building 251, University of California, Santa Barbara, Santa Barbara, CA, 93106.
(3)Laboratory for Cognitive Neuroscience, Salk Institute for Biological Studies, 10010 N, Torrey Pines Rd, La Jolla, CA, 92037.
Autism Res. 2016 Aug 13. doi: 10.1002/aur.1677. [Epub ahead of print]

ウィリアムズ症候群は7番染色体の半接合欠失を伴う希少な神経発達疾患であり、過度な親和動因による社会的動因で特徴付けられる行動表現型を呈する。これは自閉症スペクトラム障害に共通的にみられる社会的回避行動とは際立った対比を見せる。MRIによる研究でウィリアムズ症候群の皮質、特に社会的認知に関連している領域である前頭前野などは構造的にも機能的にも異常があるという観察が行われている。本研究では、現存する中では最も大規模なウィリアムズ症候群死後脳の収集物である唯一のベルージ・ウィリアムズ症候群脳コレクションを利用しており、ウィリアムズ症候群の前頭前野における細胞構築を量的に調査する初めての研究である。前頭前野のBA10とBA11、一次運動野のBA4、一次体性感覚野のBA3、視覚野のBA18という5か所の皮質領のII/III層とV/VI層の神経細胞の密度を、ウィリアムズ症候群と正常に発達した対照群で一致させた6ペアで測定した。前頭前野の神経細胞密度は対照群と比較してウィリアムズ症候群で低下している。V/VI層では最も大きな密度低下がみられ、BA10では統計的に有意なレベルであった。それに比較して、BA3とBA18は対照群と比較してウィリアムズ症候群で密度が高いが、その差は統計的に有意ではない。BA4の神経細胞密度はウィリアムズ症候群と正常に発達した対照群で差はなかった。ウィリアムズ症候群では他の領野でも変化はあるものの、前頭前野が最も強く影響を受けている。神経細胞密度は自閉症スペクトラム障害の患者でも前頭前野で変化がある。これらの知見を総合すると社会的行動の変容を伴う神経発達疾患においては前頭前野が着目対象となることが想定される。

(2016年8月)



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