染色体7q11.23座位に典型的な欠失を有するウィリアムズ症候群患者における視空間構築能力の相違
Disparities in visuo-spatial constructive abilities in Williams syndrome patients with typical deletion on chromosome 7q11.23.
村松友佳子1)、時田義人2)、水野誠司3)、中村みほ4)
1) 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所機能発達学部、
名古屋大学大学院医学系研究科小児科学
2)愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所周生期学部
3)愛知県心身障害者コロニー中央病院小児内科
4)愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所機能発達学部、Electronic address: mihon@inst-hsc.jp.
Brain Dev. 2016 Sep 29. pii: S0387-7604(16)30134-6. doi:10.1016/j.braindev.2016.09.003. [Epub ahead of print]
背景:ウィリアムズ症候群はその不均等な認知能力、特に視空間認知の障害で知られているが、個人間の表現型の差異も存在する。ウィリアムズ症候群患者における視空間認知能力の障害は欠失している7q11.23領域に存在するいくつかの遺伝子のハプロ不全に起因する可能性があると提唱されている。これは非典型的な認知障害を呈するウィリアムズ症候群患者で同定されている非典型的な欠失の調査結果に基づいている。この仮説に従えば、視空間認知能力の個人間差異は欠失のばらつきに起因することになる。
手法:ウィリアムズ症候群患者における視空間障害に寄与すると考えられる候補遺伝子を含む染色体7q11.23領域に典型的な欠失を有し、相互に血縁関係がない5人のウィリアムズ症候群患者に対して視空間構築能力の個人間差異が存在するかどうかを調査した。ベントン三次元ブロック構築課題という三次元要素を含んだ課題を使用した。この課題は二次元要素だけを含む課題に比べてより敏感であると考えられる。
結果:ウィリアムズ症候群における同じ典型的な遺伝子欠失を共有する今回の被験者間において、視空間構築能力には多様な個人間差異が存在した。被験者の一人は今回の検査において、正常に発達した成人とほぼ同じ成績を示した。
結論:本研究において、ウィリアムズ症候群の共通的欠失パターンを有する患者間においても視空間構築に関する認知能力には大きな広がりがあることが判明した。この知見は表現型における寄与の差のすべてを非典型的な欠失のような遺伝子的要因に求めることは必ずしも正しくないことを示唆している。
(2016年10月)
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