正常に発達した未就学児童やウィリアムズ症候群の未就学児童では言語ラベルが新規物体に対するサリエンスを増加させるが、自閉症ではそうではない
Verbal labels increase the salience of novel objects for preschoolers with typical development and Williams syndrome, but not in autism.
Vivanti G(1), Hocking DR(2), Fanning P(3), Dissanayake C(3).
Author information:
(1)A.J. Drexel Autism Institute, Drexel University, 3020 Market Street, Suite 560, Philadelphia, PA 19104-3734 USA ; Olga Tennison Autism Research Centre, School of Psychology and Public Health, La Trobe University, Melbourne, Australia.
(2)Developmental Neuromotor and Cognition Lab, School of Psychology and Public Health, La Trobe University, Melbourne, Australia.
(3)Olga Tennison Autism Research Centre, School of Psychology and Public Health, La Trobe University, Melbourne, Australia.
J Neurodev Disord. 2016 Dec 30;8:46. doi: 10.1186/s11689-016-9180-7. eCollection 2016.
背景:巨これまでの研究では小さな子どもにおいては、大人が言語ラベル付けを行なった物体に対しては、ラベルなしに提示された物体と比較して興味をより強く示すことが報告されている。自閉症スペクトラム障害やウィリアムズ症候群のような社会性発達に影響を与える神経発達疾患においても同様な現象がみられるかどうかは明らかではない。
手法:本研究は新たな視線追跡パラダイムを用いて言語ラベルが新規物体に対するサリエンスを増加させるかどうかを、自閉症の未就学児童35人、ウィリアムズ症候群の未就学児童18人、正常に発達した未就学児童20人に対して調べた。
結果:正常に発達した子どもやウィリアムズ症候群の子どもでは、大人が言語ラベル付けを行なった物体に対しては、ラベルなしに提示された物体と比較して有意に長い時間見つめることが確認されたが、自閉症の子どもはそうではなかった。
結論:自閉症ではない子どもにおいては、話者の言語ラベルを伴って提示された情報は「特別な状態」を与えられ、より多くの注意をひきつけ易い。対照的に自閉症の子どもは、ラベルなしの物体と比較してラベル付けされた物体に対して特別なサリエンスを付加するとは見えない。この結果は自閉症の小さな子どもにおいては教育的手がかりに対する反応が鈍いことが社会的学習を阻害しているという概念と整合している。
訳者注:サリエンス=認知において際だって強い入力シグナル。
(2017年1月)
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