心の理論の構成要素:ウィリアムズ症候群が提供する根拠
A componential view of theory of mind: evidence from Williams syndrome.
Tager-Flusberg H, Sullivan K
University of Massachusetts, MA, Boston, USA
Cognition 2000 Jul 14;76(1):59-90
本論文では心の理論を構成する2つの異なる要素について議論する。ひとつは社会的認知
(social-cognitive)であり、もうひとつは社会的知覚(social-perceptual)である。この仮
説の根拠は数多くの事実に基づいており、ウィリアムズ症候群という神経発達障害がある
稀少遺伝子疾患の子どもの研究も含まれている。これまでの研究で、ウィリアムズ症候群
の人々の社会的知覚能力は損なわれていない(be spared)ように見えると言われてきた。本
論文では彼らの心の理論を構成する社会的認知要素が損なわれている証拠を示す。ウィリ
アムズ症候群の幼児に対して3つの実験を行った。各実験でウィリアムズ症候群の子ども
は、年齢・知能指数・言語能力それぞれを同じにしたプラダ・ウィリー症候群(Prader-Willi
syndrome)、及び精神遅滞を持たない子ども達と比較された。各実験は心の理論の異なる能
力を測定することを目的にしている。実験1は「うその信念(false belief)」、実験2は「行
動の説明」、実験3は「感情表現の認識」である。どの実験においても、ウィリアムズ症候
群の子どもが対照群と比較して優れているという結果は見当たらなかった。この実験結果
や他のウィリアムズ症候群に関する研究結果を総合すると、心の理論を構成する社会的認
知と社会的知覚は分離可能だという見方を指示している。ウィリアムズ症候群においては、
独立した神経生物学的基礎に関連する社会的知覚要素だけが損なわれていない。
(2000年5月)
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