ウィリアムズ症候群幼児における日本語語彙表出の領域別獲得過程の検討
中村みほ1)、村松 友佳子12)、梅村 紋子3)、水野 誠司4)
愛知県身障者コロニー発達障害研究所機能発達学部 1)
名古屋大学医学部小児科 2)
愛知県身障者コロニー中央病院小児神経科 3)
愛知県身障者コロニー中央病院小児科 4)
脳と発達 第48巻 学術集会号(2016年6月3日〜5日)、S382ページ
【目的】ウィリアムズ症候群(以下WS)は認知能力のばらつきが大で、視空間認知発達の遅れ、過度の人懐っこさとも表現される対人面の特徴等がある。表出言語は、比較的得意な分野ながら、初期発達は遅れ、また、視空間認知に関わる語の獲得の遅れが欧米言語において指摘されている。日本語における同様所見の有無の検討に加え、各認知領域に関わる語彙獲得過程を詳細な経過観察により明らかにすることを目的とする。
【方法】研究協力の同意が得られたWS患者の保護者一名にマッカーサー言語発達質問紙(語と文法)の記入を依頼。定型発達における36か月の言語表出レベルに至るまで数か月ごとに言語表出の記録をしえたWSの幼児7名(初回参加時月齢43.7±6.3m。女児4名)を対象に以下を検討。1.言語表出が36か月レベル時点での各言語領域の表出を比較し、他領域に比し有意に表出が多い領域少ない領域を確認、2.言語表出が36か月レベルの時点から記録し得た5名について、1と同様に検討。3.7名について各言語領域の表出の経時的発達をグラフ化し、発達の過程を視認。
【結果】上記1,2,3につき以下の結果を得た。1.「位置と場所」、「接続」の表出言語が他の領域に比して有意に定値。2.「日課とあいさつ」の領域が有意に高値。3.領域ごとの言語表出のばらつきが顕著で、「位置と場所」、「接続」に加えて。「時間」も当初低地であり、前2項に先んじて表出レベルが上昇。
【結論】WSにおける初期の日本語の言語表出においても、苦手認知領域、得意認知領域が反映されていた。上記3の「時間」の語彙に関わる観察は新所見であり、ヒトの言語獲得における認知発達との関連を示唆するものとして興味深いが、今後より客観的かつ詳細な検討を要する。
(2017年3月)
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