発達障害と共感性 ―自閉症スペクトラム症を中心とした研究動向―



浅田 晃佑・熊谷 晋一郎
東京大学
心理学評論 Vol.58 No.3 2015 379-388ページ

共感性は重要な心的過程であり、コミュニケーションや社会的相互関係に重要である。社会的困難を併発する発達障害である自閉症スペクトラム症患者の認知や感情共感性に関する研究をレビューした。認知的共感の定義として、「他者が感じるように感じること(誤信念理解、情動認識)」を用い、情動的共感の定義は、「他者の心的状態を身体反応を伴い理解する過程(表情の模倣、行動の伝染、他者の情動に対する生理反応)」とする。我々はさらに、超社会性を呈することで知られているウィリアムズ症候群患者の共感性についても探索する。最後に、人は同じ特性を有する他者には容易に共感しやすいという類似性仮説について議論する。この仮説は自閉症が共感性の障害であるという見方に疑問を投げかける。この仮説はさらに、今後行われる発達障害に関する研究は、共感性を構成する個々の異なる機能に注目することが必要であることを示唆する。

(2017年6月)



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