ウィリアムズ症候群の空間記憶システムの解離
Dissociation of spatial memory systems in Williams syndrome.
Bostelmann M(1), Fragniere E(1), Costanzo F(2), Di Vara S(2), Menghini D(2), Vicari S(2), Lavenex P(1), Banta Lavenex P(1).
Author information:
(1)Laboratory of Brain and Cognitive Development, Institute of Psychology, University of Lausanne, 1005, Lausanne, Switzerland.
(2)Department of Neuroscience, Bambino Gesu Children's Hospital, 00165, Rome, Italy.
Hippocampus. 2017 Jul 15. doi: 10.1002/hipo.22764. [Epub ahead of print]
遺伝子欠失症候群であるウィリアムズ症候群は、机上で行う空間課題や方向や進路決定などを判断する課題の両方の成績に影響を与える重度の視空間障害を特徴とする。それにもかかわらず、ウィリアムズ症候群の空間能力に関してこれまでに行われた研究は、二種類の異なる空間記憶システムが進路決定を支援する平行空間表現に貢献しているという事実を無視していることである。場所の学習システムは海馬構造に依存しているとともに、周りの環境に対する柔軟な相関関係表現(認知地図としても知られている)を構築する。空間反応の学習システムは線条体に依存し、固定的な刺激反応表現(習慣としても知られている)を構築する。実際、ウィリアムズ症候群の空間応答能を、これら二種類の空間記憶システムを選択的に対象として評価した研究は存在しない。ここでは、これら二種類の記憶システムによって成り立っている空間能力に解離が見られるウィリアムズ症候群患者を報告する。同じ精神年齢範囲にある正常に成長した子どもの対照群に比べて、ウィリアムズ症候群の患者は場所学習成績に障害がみられた、対照的に、彼らの空間反応の学習システムは促進されていた。ウィリアムズ症候群患者と正常に成長した子どもに関して得られたこの結果は、場所の学習と反応の学習が競合的に相互に影響を及ぼして、通常はヒトの空間進路決定に用いられる行動戦略を制御していることを示唆している。さらに、この知見は場所学習を支える神経経路がウィリアムズ症候群を特徴付けている遺伝子欠失によって影響を受けている一方、反応学習を支援する神経経路は比較的維持されている可能性を示唆している。これらの二種類の空間記憶システム間に見られるこの解離はウィリアムズ症候群患者の空間能力を特徴づける理論的フレームワークと整合しているとともに、反応学習能力を促進させることを基礎とする新たな学習戦略の開発につながる可能性がある。
(2017年7月)
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