Williams症候群10例のDQ・IQ長期推移
石川 丹、幸田 早苗、松本 祐子、横山 未代、藤崎 賢治、
成田 たま子、辰田 収、南 槇子
札幌市児童福祉総合センター(札幌市児童相談所)
臨床小児医学 第46巻 第3号 ページ129-131、1998年6月
はじめに
Williams症候群の症状は妖精様顔貌、大動脈弁上狭窄、精神遅滞、愛想の良い饒舌
な性格、低身長、嗄声、星状虹彩、歯牙形成不全無形成などである。精神遅滞は中〜軽
度との報告が多いが幼児期から学童青年期への長期発達経過を追跡した報告は無い。
本稿では札幌市児童福祉総合センターが把握している10例について報告する。
対象と方法
対象は女児9例、男児1例の計10例、年齢は2〜20歳、平均9.2歳である。全例と
もに特異顔貌、大動脈弁上狭窄、精神遅滞の3主徴を呈する典型例である。各例のケー
ス記録を調査し、後方視的にDQ・IQ値を得た。
結果
用いられていたテスト方法は幼児期は主に遠城寺式、時に鈴木ビネー式であり、学
童期は主に鈴木ビネー式で時に田中ビネー式、青年期はWAIS-Rであった。
テスト施行年齢とDQあるいはIQの値を図1に示した。DQ値は遠城寺式の各下位項
目DQ値の平均値(平均DQ)である。図中の数字は症例番号でる。テスト方法の違うDQ・
IQ値を一つのグラフにプロットすることは心理学的には問題があることは重々承知して
いるが、図1では長期推移のおよそのパターンを示そうとして敢えて一つの図中にプロ
ットした。
幼児期に遠城寺式と鈴木ビネー式を同時に施行する。鈴木ビネー式IQ値は遠城寺式
の各下位項目DQの平均値(平均DQ)より10〜20高くなることがしばしば経験される。そ
こで本10例中3〜6歳にこの2つのテストを同時に施行した6例の結果を見たところ(表
1)、平均DQよりIQの方が10〜20高くなったのは2例のみで、4例ではほとんど差がな
かった。平均DQとIQの値は6例中4例で差がなかったので、遠城寺式と鈴木ビネー式
を同時に施行してあった場合は鈴木ビネー式のIQ値を図1の中にプロットした。
あらためて図1を見てみると10例のDQ・IQ値の推移は大概「へ」の字パターンを
とっているのがわかる。乳児期の発達の遅れは幼児期にcatch up傾向をみるが、学童期
に入ると再び徐々に遅れが顕著になる傾向が見られる。青年期には中〜軽度の遅れにな
っている。症例2〜8の7例の4〜7歳時のIQの平均と症例1〜3の3例の青年期のIQの
平均に統計的有意義があるかどうか、つまり有意な落ち込みがあるかどうかは学術的に
大事なところではある。しかし、テスト方法が統一されていなかったので有意差を検定
する意味はない。
学校環境については、症例1は小3から養護学校へ、症例2は小3から特殊学級へ、
症例3は中1から特殊学級へ移っていた。症例4は小1から特殊学級であった。
(図・表を合わせて以下省略)
(2000年7月)
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