Williams 症候群例における顔記憶の障害に関する検討



中道 和輝1)、細川 徹2)
1)京都大学大学院 人間・環境学研究科
2)東北大学大学院 教育学研究科|東北大学名誉教授
Higher Brain Function Research 36(3), 440-449, 2016

Williams 症候群 (WS) とは, 7 番染色体 7q11.23 領域の微小欠失に起因する隣接遺伝子症候群である。特徴的な社会的認知特性を持ち, 比較的良好な顔認知能力を有するとされるが, 顔の長期記憶については十分な検討が行われていない。本研究では, 1 症例の WS と定型発達成人男性 (TD) 24 名, 知的障害者 (ID) 4 名を対象に, 顔の短期記憶 (STM) と長期記憶 (LTM) について詳細な検討を行った。その結果, STM では WS の成績はID 群よりも高く TD 群と同程度であったが, LTM では TD 群よりも低くID 群と同程度であった。WS の LTM での反応の詳細を検証すると, WS は既知顔に関するヒット率が高い一方, 未知顔に関するフォルスアラーム率も高いという結果が認められた。WS は顔の記憶において未知顔であっても既知顔であるとみなしやすく, 既知・未知に関わらず顔刺激全般に対して反応バイアスを有するのかもしれない。

(2018年1月)



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