正常に発達した人と異常な発達をした人によって異なる2つの空間記憶システムが明らかになった。



Dissociable spatial memory systems revealed by typical and atypical human development.

Julian JB(1)(2), Kamps FS(3), Epstein RA(1), Dilks DD(3).
Author information:
(1)Department of Psychology, University of Pennsylvania.
(2)Kavli Institute for Systems Neuroscience Centre for Neural Computation, The Egil and Pauline Braathen and Fred Kavli Centre for Cortical Microcircuits, Norwegian University of Science and Technology.
(3)Department of Psychology, Emory University.
Dev Sci. 2018 Sep 3:e12737. doi: 10.1111/desc.12737. [Epub ahead of print]

げっ歯類の病変部の研究によって、海馬と線条体に局所的に必然的に存在し、それぞれ環境の境界線と目印となるランドマーク物体に特異的に敏感な異なる空間記憶システムの存在が明らかになった。我々は、正常に発達した人と異常な発達をした人対して境界線およびランドマークを用いた記憶課題を施行することによって、ヒトにおいてもこれらの2種類の記憶システムが必然的に異なっているかどうかをテストした。海馬に異常を有することで知られている発達障害であるウィリアムズ症候群の成人と、正常に発達した子どもと成人に、境界線やランドマーク物体に関連して場所を学習することを必要とする進路決定課題を遂行してもらった。暦年齢を一致させた正常に発達した子どもや精神年齢を一致させた正常に発達した成人と比較して、ウィリアムズ症候群の被験者は、境界線に関連する記憶は重度に障害をうけているが、ランドマークに関連する記憶はすべてのグループで同じであった。さらに、ランドマークに関連する記憶は、正常に発達したグループでは境界線に関連する記憶より早く成熟するが、これは、ウィリアムズ症候群の認知の表現型は、認知システムの成熟が遅れるという発達抑止によってもたらされているという概念をと整合している。総合的に考えると、これらの発見は、ヒトにおける異なる2つの空間記憶システムが存在することの必然的かつ発達的証拠を提供する。

(2018年9月)



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