ウィリアムズ症候群における行動面、神経面からみたシーン表現の障害



Impaired behavioral and neural representation of scenes in Williams syndrome.

Ferrara K(1), Landau B(2), Park S(3).
Author information:
(1)Department of Cognitive Science, Johns Hopkins University, USA; Center for Brain Plasticity and Recovery, Georgetown University, USA. Electronic address: kjf46@georgetown.edu.
(2)Department of Cognitive Science, Johns Hopkins University, USA. Electronic address: landau@jhu.edu.
(3)Department of Cognitive Science, Johns Hopkins University, USA; Department of Psychology, Yonsei University, South Korea. Electronic address: soojin.park@yonsei.ac.kr.
Cortex. 2019 Sep 20;121:264-276. doi: 10.1016/j.cortex.2019.09.001. [Epub ahead of print]

境界はシーンの幾何学的形状を表現する際の決定的な要素であり、空間における再定位の際に利用される。行動研究の成果で、子どもや大人は境界の特徴、特に垂直方向の範囲、を決定することに対して非常に繊細な感受性を共有していることが示されている。画像研究の結果、この境界特性は定型発達をした大人では海馬傍回場所野が司っていることが分かっている。そこで、我々はウィリアムズ症候群(遺伝子欠失によって空間機能に重度の障害がある)の患者においては、シーンの境界の垂直方向の範囲に対する感受性が行動面と神経レベルの両面で障害を受けていることを示す。行動的再定位を3種類の境界条件、すなわち平坦なマット、5cmの高さの曲面、完全な壁を用いて検査を行う。ウィリアムズ症候群の成人は、壁の境界で定義された長方形の空間では再定位を行えたが、曲面やマットの境界では再定位できなかった。対照的に、年齢を一致させた定型発達をした対照群は3種類すべての境界条件で再定位が可能であり、定型発達をした4歳児でも壁か曲面のどちらかの条件で再定位が可能であった。fMRIを使った検査で、ウィリアムズ症候群患者の行動面の障害は、境界の神経的表現が反映されていることが判明した。年齢を一致させた定型発達をした対照群は、マットと曲面と壁の境界を描いたシーンに対して海馬傍回場所野内でそれぞれに特徴的な神経反応を呈するが、ウィリアムズ症候群の患者は、壁対マットや曲面でのみ反応に差異がみられるが、マット対曲面では差異がない。総合的に考えると、この結果は再定位行動に用いられる境界の表現と神経エンコードの間に密接な結合があることを明らかにしており、この空間表現の重要な要素に対するダメージが遺伝的背景を有している可能性を示唆している。

(2019年11月)



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