マウスの一次視覚野における主観的輪郭の皮質内表現に対するトップダウンフィードバック制御



Top-Down Feedback Controls the Cortical Representation of Illusory Contours in Mouse Primary Visual Cortex.

Pak A(1), Ryu E(1), Li C(1), Chubykin AA(2).
Author information:
(1)Department of Biological Sciences, Purdue Institute for Integrative Neuroscience, Purdue University, West Lafayette, IN.
(2)Department of Biological Sciences, Purdue Institute for Integrative Neuroscience, Purdue University, West Lafayette, IN chubykin@purdue.edu.
J Neurosci. 2019 Dec 2. pii: 1998-19. doi: 10.1523/JNEUROSCI.1998-19.2019. [Epubahead of print]

視覚系は制限された感覚情報を使って複雑なシーンから図形を切り出して認識するように発達してきた。輪郭の知覚はこのプロセスで重要であり、隣り合う図形で連続性が途切れている場合でも知覚される。このように形状を分解したり密着させられる動物の視覚系の堅牢性は、一方で光学的錯覚という興味深い現象を引きおこす。このような錯覚は、輪郭の統合や物体の検出といった機能の裏付けとして存在する神経内の計算処理を解読する手掛かりになる。カニッツァの三角形は、直接的な受容野の活性化を経なくても低次視覚野内で反応が誘起されることが示されている。視覚野内部間の再帰的処理がこの処理の中で誘起されていることが提唱されている。しかし、低次視覚野における錯覚反応の生成に高次視覚野が直接影響を与えているかどうかはわかっていない。生体内の電気生理学的かつ光遺伝学的手法を用いた行動観察により、オスのマウスの一次視覚野がカニッツァの三角形輪郭に反応することを我々がまず明らかにした。カニッツァの三角形に対する反応は、一次視覚野内の実在するコントラストで定義された輪郭に対する反応に対して遅れて誘起される。次に、錯覚反応は方向選択性を有していることを示す。最後に、一次視覚野内における主観的輪郭の知覚の神経的連関がトップダウンフィードバック制御を受けていること示す。我々の得た結果は、主観的輪郭の知覚で必要となる低次視覚野において欠けている輪郭線を、高次視覚野が補完している可能性を示している。

重要な記述

カニッツァの三角形を知覚する機能は、統合失調症や自閉症やウィリアムズ症候群などの神経発達疾患で障害がある。しかし、主観的輪郭の知覚メカニズムはほとんど理解されていない。ここで我々は、一般的に扱いやすいモデルとしてのマウスにおいてカニッツァの三角形の知覚に関する行動と神経の相関を記述した。我々は一次視覚野におけるカニッツァの三角形に対する神経反応をトップダウンフィードバックが制御していることを示した。我々が知りうる限で、これはマウスにおけるカニッツァの三角形の神経の連関に対する初めての記述であり、トップダウンフィードバックによる制御という因果関係を初めて示している。

【訳者注】
主観的輪郭: カニッツァの三角形:
(2019年12月)



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