神経発達疾患における記憶の時空間的組織とその破壊



The spatiotemporal organization of episodic memory and its disruption in a neurodevelopmental disorder.

Mastrogiuseppe M(1)(2), Bertelsen N(1)(3), Bedeschi MF(4), Lee SA(5).
Author information:
(1)Center for Mind/Brain Sciences (CIMeC), University of Trento, Rovereto, Italy.
(2)Department of Human Studies, University of Trieste, Trieste, Italy.
(3)Center for Neuroscience and Cognitive Systems (CNCS), Italian Institute of Technology, Rovereto, TN, Italy.
(4)Medical Genetic Unit, Woman-Child-Newborn Department, Fondazione IRCCS Ca'Granda Ospedale Maggiore Policlinico, Milan, Italy.
(5)Department of Bio and Brain Engineering, Korea Advanced Institute of Science and Technology, Daejeon, Korea. sangah.lee@kaist.ac.kr.
Sci Rep. 2019 Dec 5;9(1):18447. doi: 10.1038/s41598-019-53823-w.

エピソード記憶に関する最新理論では、出来事を表すのに必要な時空間的フレームワークを海馬が提供していると仮定している。この理論が正しければ、子どものエピソード記憶の発達は空間と時間の情報を最初に結合する能力に依存しているのであろうか? そして少なくとも部分的にではあるが、この能力は正常な海馬の機能に依存しているのであろうか? 我々はエピソード記憶について、2歳から8歳のこどもにおける発達を調査する(研究1)とともに、視空間障害や非定型な海馬機能を特徴とする神経発達遺伝子疾患であるウィリアムズ症候群でその障害を調査(研究2)した。方法として、エピソード記憶の、「何を」、「どこで」、「いつ」の3種類のコンポーネントを分離できる非言語的物体配置課題を利用した。海馬が司る時空間的フレームワークの概念に一致するように、我々が得た結果も、記憶に置かる「どこで」と「いつ」のコンポーネント間結合が発達段階の初期、すなわち3歳前後で現れるが、ウィリアムズ症候群ではこの結合が特に障害を受けていた。空間と時間の結合はどちらも完全なエピソード記憶(「何を」+「どこで」+「いつ」)に先行するとともに重要であり、物体とその空間的位置をうまく関連付けられることがこの発達プロセスを仲介しているようにみえる。

(2019年12月)



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