ウィリアムズ症候群の子どもの音楽能力と言語技能間の食い違い
Discrepancy between musical ability and language skills in children with Williams syndrome.
北村柚葵 1, 北洋輔 2, 奥村安寿子 3, 加賀佳美 4, 奥住秀之 5, 石川祐司 5, 中村みほ 6, 稲垣真澄 4
1 東京学芸大学教職大学院; 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部. Electronic address: m181207w@st.u-gakugei.ac.jp.
2 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部; Cognitive Brain Research Unit (CBRU), Faculty of Medicine, University of Helsinki, Finland
3 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部; 日本学術振興会特別研究員
4 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部
5 東京学芸大学教育学部
6 岡崎こども発達医療センター
Brain Dev. 2020 Jan 6. pii: S0387-7604(19)30708-9. doi: 10.1016/j.braindev.2019.12.002. [Epub ahead of print]
背景:ウィリアムズ症候群の子どもは音楽に対して顕著な興味を示す。臨床環境における調査では特別に頻度が高い。しかし、ウィリアムズ症候群では言語に障害を受けていることが知られているが、この言語応答を必要とする実験的課題から得られた関連するデータが用いられていることから、ウィリアムズ症候群患者の音楽能力の実態には疑問が残る。本研究は、新たに開発された言語を極力用いない音程弁別課題を用いてウィリアムズ症候群の子どもの音楽能力を調査し、言語技能との関連を明らかにすることを目的する。
手法:ウィリアムズ症候群の子ども11人が本研究に参加した。言語使用を最小限に抑えた新たな音程弁別課題を用いた。ピアノで2音を順番に提示し、最初の音に対して2番目の音が、高いか、低いか、同じかを言語を使わない反応で示すように求める。
結果:ウィリアムズ症候群の子どもの音程弁別成績は、彼らの暦年齢から予想されるレベルより低く、非言語課題と比較してさえも低い。音程弁別能力と言語的精神年齢は乖離しているように見える。つまり、言語技能レベルが低いウィリアムズ症候群の子どもが、予想外に高い音程弁別能力を示したり、またその逆もあった。
結論:我々が得た結果は、ウィリアムズ症候群の子どもの暦年齢に対して音楽能力が低いことを示している。音楽能力と言語技能間の食い違いは、定型発達をした子どもとは異なる独特な発達関係が存在することを示している。これらの知見は、介入的な音楽療法を適用する前にウィリアムズ症候群における音楽的能力の実態を評価することの重要性を示唆する証拠を提供している。
(2020年1月)
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