システマティック・レビューとメタ分析:知的障害を伴う神経形成疾患を有する子どもの精神保健
Systematic Review and Meta-Analysis: Mental Health in Children With Neurogenetic Disorders Associated With Intellectual Disability.
Glasson EJ(1), Buckley N(1), Chen W(2), Leonard H(1), Epstein A(1), Skoss R(1), Jacoby P(1), Blackmore AM(3), Bourke J(1), Downs J(4).
Author information:
(1)Telethon Kids Institute, The University of Western Australia, Perth, Australia.
(2)Complex Attention and Hyperactivity Disorders Service, Department of Health, Australia, Perth, WA, Australia Centre and Discipline of Child and Adolescent Psychiatry, Psychosomatics and Psychotherapy, The University of Western Australia, Perth, WA, Australia.
(3)Therapy and Health Services, Ability Centre, Perth, Australia.
(4)School of Physiotherapy and Exercise Science, Curtin University, Perth, Australia. Electronic address: Jenny.Downs@telethonkids.org.au.
J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2020 Jan 13. pii: S0890-8567(20)30008-3. doi: 10.1016/j.jaac.2020.01.006. [Epub ahead of print]
目的:
知的障害を伴う神経形成疾患の行動表現型には精神疾患の合併症を伴うことが多い。本システマティック・レビューとメタ分析の目的は、神経形成疾患を有する子どもや青年における精神疾患の有病率や症状を体系的にレビューし、症候群間の表現型面の特性を比較することである。
手法:
EDLINEとPsycINFOの両データベースの初期から2018年12月までの期間の論文を調査した。対象とする適格な論文は、査読付で英語で記述され、4歳から21歳までの子どもにおける精神疾患と症状が正式な精神医学的評価手法や精神保健徴候学的標準評価手法を用いて記述されているものである。統合された有病率は、十分なデータを使った研究を対象にランダム効果メタ分析を行って確定した。有病率の推定は二項比率検定を用いて母集団のデータと比較した。
結果:
レビュー対象とした2301本の論文から、統合する最終的なデータプール向けに39本の論文を抽出し、4039人の患者のデータを対象とした。10種類の症候群が含まれており、そのうち、ダウン症候群・22q11.2欠失症候群・脆弱X症候群・ウィリアムズ症候群・プラダー−ウィリー症候群という5種類が主要な症候群である。子どもの行動チェックリストが精神疾患徴候を評価するツールとしても多く使用されていた。臨床的閾値を超える総合点を用いた統合された有病率は、ダウン症候群が最も低く(32%; 95%信頼区間は19%-44%)、プラダー−ウィリー症候群が最も高い(74%; 95%信頼区間は65%-82%) 。さらに、各症候群とも母集団に比べて有意に高い有病率を示した。並行的な傾向が、内部領域、外部領域、及び社会的下位尺度の評点で観察された。
結論:
疾患相互間で「精神疾患の表現型」の現れ方に関する差異脆弱性(Differential vulnerability)が認められた。より高いレベルの社会的能力や応答能力を有する症候群の場合、精神病理の進展に対する防御能力を比較的発揮できるように見える。そしてこの予備的な発見は今後のさらなる探求に値することを示す。
(2020年1月)
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