偏桃体のセロトニン作動系神経支配は自閉症スペクトラム障害では増加しウィリアムズ症候群では減少する
Serotonergic innervation of the amygdala is increased in autism spectrum disorder and decreased in Williams syndrome.
Lew CH(1), Groeniger KM(1), Hanson KL(1), Cuevas D(2), Greiner DMZ(2), Hrvoj-Mihic B(1), Bellugi U(3), Schumann CM(4), Semendeferi K(5).
Author information:
(1)Department of Anthropology, University of California, San Diego, USA.
(2)Department of Biological Sciences, University of California, San Diego, USA.
(3)Salk Institute for Biological Sciences, San Diego, USA.
(4)Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, University of California, Davis School of Medicine, the MIND Institute, Sacramento, USA.
(5)Department of Anthropology, University of California, San Diego, USA. ksemende@ucsd.edu.
Mol Autism. 2020 Feb 5;11(1):12. doi: 10.1186/s13229-019-0302-4.
背景:
ウィリアムズ症候群と自閉症スペクトラム障害は神経発達障害の一種であり、遺伝的関連、対立的な社会行的動表現型、前頭前野や偏桃体を含む重要な脳部位にある神経配置の対立的な病理学的差異などの共通項がある。セロトニン作動系は神経発達を裏打ちする多くのプロセスにとって非常に重要であり、さらに行動の多様性に関連する重要な神経調節物質でもある。偏桃体はセロトニンの投射に高度に支配されていて、このことはセロトニン作動系が神経活動における重要な媒介物質であることを示唆している。セロトニン作動系の混乱や、偏桃体の異型な構造や機能はウィリアムズ症候群と自閉症スペクトラム障害の両方に関連している。
手法:
我々は、自閉症スペクトラム障害かウィリアムズ症候群の診断を受けた患者、および定型発達した脳の死後脳内の偏桃体を対象に4つの小部分内のセロトニン作動系軸索の密度を定量化した。
結果:
2種類の症候群はセロトニン作動系神経支配において正反対の変化を確認した。すなわち、自閉症スペクトラム障害は定型発達群に比べてセロトニン作動系軸索の密度が増加し、ウィリアムズ症候群では減少していた。有意な差 (p < 0.05)がウィリアムズ症候群と自閉症スペクトラム障害の複数の偏桃体の神経核に関するデータ間において確認された。
限界:
本研究はヒトの死後組織の利用可能性の制限をうけている。ヒトの死後脳を利用するほとんどの研究、特に希少疾患の死後研究ではサンプル数が少ないことは避けられない
結論:
偏桃体のセロトニン作動系神経支配における差がある変動はウィリアムズ症候群と自閉症スペクトラム障害における社会行動的表現型に存在する差異に貢献している可能性がある。得られたこの知見を活用することで、今回の症候群やその他の非定型的な社会行動を特徴とする障害を対象とした将来の治療法を目指した研究に対して示唆を与えるものである。
(2020年2月)
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