ウィリアムズ症候群の数学能力の発達:システマティック・レビュー
Mathematical development in Williams syndrome: A systematic review.
Van Herwegen J(1), Simms V(2).
Author information:
(1)Department of Psychology and Human Development, UCL Institute of Education, UK. Electronic address: J.vanherwegen@ucl.ac.uk.
(2)Department of Psychology, Ulster University, Coleraine, UK.
Res Dev Disabil. 2020 Feb 19;100:103609. doi: 10.1016/j.ridd.2020.103609. [Epub ahead of print]
背景:
このシステマティック・レビューは、ウィリアムズ症候群の数学的能力に関する最新のシステマティックな研究や仮説を調査した初めてのものである。この症候群は希少遺伝子疾患であり、不均等な認知プロフィールを有する。数学能力の発達は複雑であり、かつ領域固有の能力と普遍的な能力の両方に依存している。現在のところ、ウィリアムズ症候群のどのような数学能力が調査されているか、そしてこの調査対象分野においてどのようなギャップが存在するかの、どちらも明らかになっていない。
手法と手順:
システマティックなレビュー探索プロセスを経て22種類の出版物から27本の論文を抽出した。
結果:
全体的に見て数学能力は、単純な数え上げや少数の物の個数を瞬間的に捉えるサビタイジングの能力を除いて、障害を受けているものの全体的な精神年齢とは一致していると報告されている。しかし、これまでの文献ではウィリアムズ症候群におけるこれらの数学能力の障害の根底をなす原因は確定されていない。いくつかの研究によれば、ウィリアムズ症候群の数学能力は、定型発達をしているが数え上げの理解や記数法に関する知識に障害がある人に比べて、より広範囲に言語能力に依存していることを示唆している。しかし、今回調査した研究は数学的技能の異なる側面を対象としているうえ、同じ研究の中において数学的発達の様々な側面の評価を複数行った研究はない。さらに、ウィリアムズ症候群の患者は個人差が大きいことが知られているにもいかかわらず、各研究は年齢範囲が非常に広く、参加者のサンプル数が少ないことが多い。
結論:
ウィリアムズ症候群の数学能力が障害を受けていることは分かっているが、この分野は未だ研究中であり、ウィリアムズ症候群の数学能力の発達の基礎をなす認知機構に対する見通しを得られるような縦断的研究が不足している。そのために、介入や教育実践に有意義な情報を提供できるような根拠に基づく知識が不足している。
(2020年3月)
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