III. ウィリアムズ症候群における相貌認識の電気生理学的研究
III. Electrophysiological Studies of Face Processing in Williams Syndrome.
Mills DL, Alvarez TD, St George M, Appelbaum LG, Bellugi U, Neville H
University of California at San Diego.
J Cogn Neurosci 2000 Mar;12 Suppl 1(1):47-64
ウィリアムズ症候群は遺伝子に起因する疾病で、異なる認知機能ドメイン間の能力にばらつきが
見られることを特徴としている。本研究ではウィリアムズ症候群の患者で特に能力が維持されて
いる相貌認識能力に関連する脳の活動を調査した。被験者は正立した写真、あるいは上下逆(倒立)
の写真をペアにして見せられ、2枚目の写真が1枚目と同じ人物かどうかを答える。以前行った普通
の成人を対象にした研究結果から、正立した顔及び倒立した顔の写真認識に関して、タイミングと
事象関連電位効果(ERP:event-related potential effects)の分布にかなり大きな違いがあること
が判明している。正立した写真を普通の成人に見せた場合、2枚目の写真の提示からおよそ320ミリ
秒後(N320)に、2枚の写真が一致する場合と一致しない場合で事象関連電位の違いが認められた。
この"N320"効果は右脳半球の前部で最大であった。対照的に、倒立した写真を見せると顔の違い
に対する反応は400ミリ秒から1000ミリ秒の間に現れる大きな正の要素から構成され、最大値は
頭頂部に左右対象に観察された。正常な成人とは異なり、ウィリアムズ症候群の被験者では正立
した写真と倒立した写真の両方にN320不一致効果が見られた。加えて、ウィリアムズ症候群の
被験者には正常な成人で観察される右脳半球に偏る非対称性が見られない。ウィリアムズ症候群
の被験者では、正立した写真と倒立した写真の両方で、100ミリ秒の位置に小さな負の異常反応
(N100)と、200ミリ秒の位置に大きな負の異常反応(N200)も観察された。この事象関連電位パターン
はウィリアムズ症候群の被験者全員に観察されたが、正常な対照群には見つからなかった。この
実験結果は、ウィリアムズ症候群の被験者の顔に対する強い集中力に関係している可能性がある
と供に、この疾病特有の徴候の可能性がある。この実験結果は、ウィリアムズ症候群患者の維持
されている認知機能が脳の特定領域の異常に関係しているという、我々がウィリアムズ症候群患
者に対して行った言語処理に関する事象関連電位実験の結果と一致している。
(2000年9月)
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