自閉症スペクトラム障害とウィリアムズ症候群における予測因子としての感覚処理プロファイルと自閉症的徴候
Sensory processing profiles and autistic symptoms as predictive factors in autism spectrum disorder and Williams syndrome.
Glod M(1), Riby DM(2), Rodgers J(1).
Author information:
(1)Institute of Neuroscience, Newcastle University, Sir James Spence Institute, Royal Victoria Infirmary, Newcastle upon Tyne, UK.
(2)Department of Psychology, Durham University, Science Laboratories, Durham, UK.
J Intellect Disabil Res. 2020 May 13. doi: 10.1111/jir.12738. Online ahead of print.
背景:異常な感覚反応は自閉症スペクトラム障害の診断基準に含まれているが、ウィリアムズ症候群のような他の神経発達障害の患者にも共通的にみられる。しかし、感覚反応の異型性の症候群間比較とそれぞれの症候群における特異性の評価はこれまでほとんど行われていない。我々の目的は、(1)自閉症スペクトラム障害とウィリアムズ症候群の両グループにおける感覚プロファイルを調査し比較すること、(2)感覚処理スコアを含む自閉症的徴候によって各グループへの帰属を予測できるかどうかを調べることである。
手法:知的障害がある自閉症スペクトラム障害の子どもの親を26人、(知的障害がない)自閉症スペクトラム障害の子どもの親を30人、4歳から16歳のウィリアムズ症候群の親を26人集めた。両親には、彼らの子どもの感覚表現を示す情報を提供してもらう目的で感覚プロファイルと、子どもの社会性障害の程度を評価するために対人応答性尺度第2版(the Social Responsiveness Scale - Second Edition(SRS-2))を記入してもらった。
結果:3つのグループの感覚処理スコア官に有意な差は見られなかった。感覚4象限(sensory quadrants)と対人応答性尺度第2版のトータルスコアを説明変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。このモデルは、低登録(鈍感)、感覚過敏、対人応答性尺度第2版のトータルスコアを有意な予測因子として、グループへの帰属を有意に予測していた。
結論:本知見は、高い発生率で感覚反応の異型性が神経発達特徴に共通的にみられるものの、自閉症スペクトラム障害とウィリアムズ症候群を確実に識別することはできないこと示している。しかし、低登録(鈍感)や感覚過敏に関連する行動は自閉症スペクトラム障害においてより特徴的である。感覚プロファイルで定義されたどのような行動が神経発達障害間の識別に利用でき、診断基準に含められるかを探求するためにはさらなる研究が必要である。
訳者注:感覚プロファイル(sensory profile)
:Winnie Dunn が作業療法の領域で提唱した感覚処理モデル(Dunn’s model of sensory processing: Dunn, 2001, 2007)を元にしている。彼女は、刺激に対する反応を低登録(low registration: 鈍感)、感覚探求(sensation seeking)、感覚過敏(sensory sensitivity)、感覚回避(sensation avoidant)の4つの象限で捉えた。
(2020年5月)
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