出生前の農薬に対する暴露と全前脳胞症のリスク:症例対照研究
Prenatal exposure to pesticides and risk for holoprosencephaly: a case-control study.
Addissie YA(1), Kruszka P(2), Troia A(3), Wong ZC(3), Everson JL(4)(5), Kozel BA(3), Lipinski RJ(4)(5), Malecki KMC(5)(6), Muenke M(1).
Author information:
(1)Medical Genetics Branch, National Human Genome Research Institute, The National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA.
(2)Medical Genetics Branch, National Human Genome Research Institute, The National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA. paul.kruszka@nih.gov.
(3)National Heart, Lung, and Blood Institute, The National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA.
(4)Department of Comparative Biosciences, School of Veterinary Medicine, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI, USA.
(5)Molecular and Environmental Toxicology Center, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI, USA.
(6)Department of Population Health Sciences, School of Medicine and Public Health, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI, USA.
Environ Health. 2020 Jun 8;19(1):65. doi: 10.1186/s12940-020-00611-z.
背景:感受性期間に特定の量の農薬暴露を受けることが様々な先天性疾患につながっている。初期の実験的結果によれば、農薬の活性成分と全前脳胞症(ヒトの前脳における最も共通的にみられる奇形)に関連があることが示唆されている(胎児250人に1人)。ヒトを対象とした研究はまだ行われていない。本研究は複数の期間別の農薬暴露状況と胎児における全前脳胞症のリスクを調査した。妊娠前および妊娠初期、すなわち子宮内で脳が発達する時期は最も決定的な期間であるという仮説がある。
手法:この遡及的症例対照研究のための質問票を開発し、家庭、職業、環境面における農薬暴露を評価した。妊娠前および謹慎期間の初期、中期、後期という4つの暴露期間を考慮した。症例は国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute)において実施中の全前脳胞症に関する臨床研究を通じて確定した。同じく、対照群はウィリアムズ症候群の子どもから確定した。同症候群は先天性奇形を特徴とするが、病原学的には全前脳胞症とは無関係である。症例と対照群の間で暴露に関する見込みの差を調査した。
結果:91人の症例と56人の対照群から得られた結果として、妊娠期間に特定の農薬への暴露があったと報告した女性の場合に全前脳胞症のリスクが高いことが示された。農薬には家庭用害虫駆除剤(修正オッズ比2.89、信頼区間:0.96-9.50)やペット用の殺虫剤やダニ駆除剤(修正オッズ比3.84、信頼区間:1.04-16.32)が含まれる。妊娠前や妊娠中における家庭向けの害虫退治製品への暴露は全前脳胞症のリスクを高めることと関連している(修正オッズ比2.60、信頼区間:0.84-8.68)。妊娠期間中の農薬に対する職業被爆との関連は見られなかった(修正オッズ比1.15、信頼区間:0.11-11.42)が、暴露割合が低い。全前脳胞症罹患傾向をより高めたのは、農地に隣接して居住していたことである(修正オッズ比3.24、信頼区間:0.94-12.31)。
結論:本観察による知見は実験結果と整合しており、個人用、家庭用、農業用のどのタイプの農薬であれ妊娠期間に暴露すると全前脳胞症のリスクが高まる可能性がある。今後さらに、遺伝子と環境の相互作用の調査を行うことが予定されている。
(2020年6月)
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