ウィリアムズ症候群とダウン症候群における知覚的サビタイジングと概念的サビタイジング:視線移動からの洞察
Perceptual subitizing and conceptual subitizing in Williams syndrome and Down syndrome: Insights from eye movements.
Ranzato E(1), Tolmie A(2), Van Herwegen J(2).
Author information:
(1)Department of Psychology and Human Development, UCL Institute of Education, 20 Bedford Way, Bloomsbury, London, UK. Electronic address: e.ranzato@ucl.ac.uk.
(2)Department of Psychology and Human Development, UCL Institute of Education, 20 Bedford Way, Bloomsbury, London, UK.
Res Dev Disabil. 2020 Aug 20;106:103746. doi: 10.1016/j.ridd.2020.103746. Online ahead of print.
背景と目的:ウィリアムズ症候群患者やダウン症候群患者における数学能力の困難さは広く認識されている。知覚的サビタイジングと概念的サビタイジングは、定型発達をしている母集団における数学能力獲得の領域固有の先行指標である。本研究はウィリアムズ症候群とダウン症候群におけるサビタイジング能力の調査に初めて視線追跡手法を用いた。
手法と手順:ウィリアムズ症候群被験者25人とダウン症候群被験者24人を、精神年齢を一致させた若い定型発達児(n=25)のグループと比較した。サイコロ状またはランダムなパターンのどちらかの形状に配置された1個から6個の点を被験者に数えることを求めた。
成績と結果:正確性と反応時間の分析の結果、両臨床グループ(ウィリアムズ症候群とダウン症候群)と対照群の間に有意な差はみられず、異なる実験水準における数え上げ課題を実行する際に、被験者全員が同じ手順を使っていることを示唆している。視線移動を分析した結果、ウィリアムズ症候群患者とダウン症候群患者の両方ともが、数える際に非効率的な走査手法を取っていることが判明した。さらに、視線移動を分析した結果からは、すべての実験条件において対照群と比べてダウン症候群被験者は注視する時間が有意に短いことが判明している。
結論と考察:現時点の研究からウィリアムズ症候群患者とダウン症候群患者のどちらも知覚的サビタイジングと概念的サビタイジングを行えることが明らかになった。さらに我々の研究結果から、ダウン症候群患者の注視の不安定さはサビタイジングの実施には影響を与えていないが、数える際の正確性が低いことを説明している可能性がある。この知見はこれまでの先行研究との関係、およびこれらの疾患を有する患者グループの数え上げや記号的数学能力を改善するための介入プログラムにおよぼす影響という面を議論する。
【訳者注】
サビタイジング(subitizing):〔目の前に出された物の数を〕即座に認知すること。厳密には,一見してわかる知覚的サビタイジング(perceptual subitizing)とは別に、数を把握するときに「まとまりを構成する部分」と全体とを合わせて捉える力を概念的サビタイジング(conceptual subitizing)とし、サビタイジングは2分類できること、そして後者の能力は数の集合をイメージ上で合成・分解できる力へとつながることが指摘されている。
(2020年8月)
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