自閉症、ウィリアムズ症候群、ダウン症候群の抑揚に関するメタ分析



A meta-analysis of prosody in autism, Williams syndrome, and Down syndrome.

Loveall SJ(1), Hawthorne K(2), Gaines M(3).
Author information:
(1)University of Nebraska - Lincoln, Department of Special Education and Communication Disorders, 301 Barkley Memorial Center, P.O. Box 830738, Lincoln, NE, 68583, United States; University of Mississippi, Department of Communication Sciences & Disorders, P.O. Box 1848, 164 Jeannette Phillips Drive, University, MS, 38655, United States. Electronic address: sloveall-hague2@unl.edu.
(2)Gallaudet University, Department of Hearing, Speech, and Language Sciences, Sorenson Language and Communication Center, Washington, DC, 2002, United States; University of Mississippi, Department of Communication Sciences & Disorders, P.O. Box 1848, 164 Jeannette Phillips Drive, University, MS, 38655, United States. Electronic address: kara.hawthorne@gallaudet.edu.
(3)University of Mississippi, Department of Communication Sciences & Disorders, P.O. Box 1848, 164 Jeannette Phillips Drive, University, MS, 38655, United States. Electronic address: madgaines13@gmail.com.
J Commun Disord. 2020 Nov 22;89:106055. doi: 10.1016/j.jcomdis.2020.106055. Online ahead of print.

抑揚、すなわち会話のリズムと旋律は効果的なコミュニケーションにとって重要な要素である一方で、コミュニケーションに苦労している多くの人々にとっては困難を覚える分野である。本論文は、the Profiling Elements of Prosody in Speech-Communication (PEPS-C; Peppe & McCann, 2003)という手法を用いて自閉症スペクトラム障害、ウィリアムズ症候群、ダウン症候群の旋律にアクセス可能な9本の研究(と公開されていない2セットのデータ)を対象としたメタ分析である。我々は当初、知的障害を共通的に併発するさまざまな神経発達障害を含めた研究とすることを目的としていたが、3種類のデータベース(PsychInfo, ERIC, and PubMed)を含めて体系的に探索したところこれら3種類のグループだけしか特定できなかった。メタ分析の対象とする研究は、知的障害を共通的に併発する神経発達疾患のグループ(n≧3)と、暦年齢や非言語能力あるいは言語能力を位置させた定型発達をした対照群を含むことが必要である。さらにこれらの研究はPEPS-Cで利用可能な元データが報告されていることと、英語で利用可能であることを条件とした。研究の品質はダウンズら(Downes et al. (2016))によって提唱されたチェックリストを用いて評価した。研究結果からは、抑揚の形式が各病因において弱点となっていること、一方で独特の長所と弱点のパターンの証拠が抑揚機能に見られた。高機能自閉症あるいはアスペルガー症候群に分類される自閉症のグループ(n = 5)は情動に関して弱点を示す一方で、会話の終わり(turn-end)や注目課題などは比較的強い。ウィリアムズ症候群のグループ(n = 4)は句/文章レベルでは弱点を示すが、単語レベル課題には比較的強い。ダウン症候群のグループ(n = 2)は全般的にもっとも困難度が高いが、表出性にくらべて受容性機能課題のほうの成績が良い。研究結果と関連するPEPS-Cの下位課題を合わせて考えることで、各母集団に関する発見内容をもっと普遍化することが可能であり、治療介入の目標を定めることもできる。しかし、確認された研究の数が限られていることもあり、知的障害者の抑揚についてさらなる研究の必要性が本研究によって明らかとなった。

(2020年12月)



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