自閉症スペクトラム障害やウィリアムズ症候群における音声のメロディーの記憶亢進



Enhanced Memory for Vocal Melodies in Autism Spectrum Disorder and Williams Syndrome.

Weiss MW(1)(2), Sharda M(1)(2), Lense M(3), Hyde KL(1)(4), Trehub SE(5).
Author information:
(1)International Laboratory for Brain, Music, and Sound Research, Montreal, Quebec, Canada.
(2)Department of Psychology, University of Montreal, Montreal, Quebec, Canada.
(3)Department of Otolaryngology - Head and Neck Surgery, Vanderbilt University Medical Center; Vanderbilt Kennedy Center; Vanderbilt Brain Institute, Nashville, Tennessee, USA.
(4)Faculty of Medicine, McGill University, Montreal, Quebec, Canada.
(5)Department of Psychology, University of Toronto Mississauga, Mississauga, Ontario, Canada.
Autism Res. 2021 Jan 4. doi: 10.1002/aur.2462. Online ahead of print.

定型発達をした成人や子どもは楽器によるメロディーよりも音声によるメロディー(歌詞はない)のほうがよく記憶できる。これはヒトの発声に対する生物的あるいは社会的な重要性に起因している。そこで我々は、コミュニケーションや社会的交流に持続的な困難を有する自閉症スペクトラム障害の子どもや、高度に社会的で時に相手を問わず友好的なウィリアムズ症候群の青年や成人が、定型発達をした人々で観察される音声のメロディーに対する記憶の優位性を示すかどうかを調べた。自閉症スペクトラム障害の子ども26人、同程度の精神年齢を有するウィリアムズ症候群の青年や成人26人、定型発達をした子ども26人に対して音声と楽器(ピアノとマリンバ)のメロディーの記憶を調べた。彼らに12曲の聞いたことのない民族音楽のメロディーを異なる音色で聴かせたのち、予期せぬ認知試験を行っている間に、24曲のメロディー(半分は以前聴いたことがある)のそれぞれが古い(聞いたことがある)か新しい(これまで聞いたことがない)かを示すように要求した。被験者は古い曲と新しい曲を聞き分けることができたが、全体的な記憶には違いがあった。やはり彼らも音声のメロディーには比較的な優位さを示した。手短に言うと、自閉症スペクトラム障害やウィリアムズ症候群の患者は音楽という場においても社会的に重要である聴覚信号の処理が亢進している。

レイサマリー:定型発達をした子どもや成人は楽器よりも音声によるメロディーのほうをよりよく記憶する。本研究では社会的交流に重大な困難を有する自閉症スペクトラム障害の子どもや、高度に社会的なウィリアムズ症候群の子どもや成人も音声によるメロディーに対して同等の記憶優位性を示すことを発見した。この結果はこれらの患者集団に対する音楽療法への意味がある。

(2021年1月)



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