運動認知とその障害
Motion perception and its disorders.
Barton JJS(1).
Author information:
(1)Departments of Medicine (Neurology), Ophthalmology and Visual Sciences, and Psychology, University of British Columbia, Vancouver, BC, Canada. Electronic address: jasonbarton@shaw.ca.
Handb Clin Neurol. 2021;178:257-275. doi: 10.1016/B978-0-12-821377-3.00013-1.
我々は動的な世界で生きているので、運動は我々の視覚経験の基本的要素である。コンピュータを利用した刺激を提供できるようになったことで、大局的統合や分割、速度と方向の識別、運動の後効果、自己の移動に伴う視覚フロー、運動的手掛かりから得られた物体形状の認知、点光源生体運動などを含む運動表現型の幅広い組み合わせの対照研究を実施できるようになった。最初に動物実験を行った結果、運動選択野、すなわちV5とも呼ばれ後頭側頭皮質に存在するMT野(middle temporal area)、さらにそれに続くV5A(MST(上側頭野中央部)とも呼ばれる)、V6/V6A(腹側頭頂間野)などの運動に感受性がある領域が発見された。ヒトにおいては運動認知に重篤な障害、すなわち大脳性運動視喪失をもたらすV5/V5A複合体の両側性病変は非常に稀である。一側性V5/V5A病変はそれより発生頻度は高いが、軽度の無症候性障であり多くの場合は対側性半視野に限定される一方で、頭頂部の病変は点光源生体運動の認知や注意を求められる高次運動課題などに障害を及ぼす。運動認知の障害は視神経症、特定の緑内障、アルツハイマー病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体認知症でも見られることが知られている。脳室周囲白質軟化症を有するあるいは有していない未熟児、ウィリアムズ症候群や自閉症や失読症などの発達症候群なども運動認知の障害を合併しており、これは背側経路の発達的脆弱性の存在を示唆している。
(2021年4月)
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