ウィリアムズ症候群成人の安静時におけるアルファ活動とベータ活動に関する脳波調査
An EEG investigation of alpha and beta activity during resting states in adults with Williams syndrome.
Greer JMH(1), Riby DM(2)(3), McMullon MEG(4), Hamilton C(4), Riby LM(4).
Author information:
(1)Department of Psychology, Northumbria University, Newcastle upon Tyne, UK. joanna.greer@northumbria.ac.uk.
(2)Department of Psychology, Durham University, Durham, UK.
(3)Centre for Developmental Disorders, Durham University, Durham, UK.
(4)Department of Psychology, Northumbria University, Newcastle upon Tyne, UK.
BMC Psychol. 2021 May 5;9(1):72. doi: 10.1186/s40359-021-00575-w.
背景:ウィリアムズ症候群は神経発達障害であり注意や抑制のプロセスの実行に欠陥があることが特徴である。本研究はウィリアムズ症候群成人の安静時における神経メカニズムを調査して、この症候群に合併する注意や抑制の障害に対してどのように影響しているかを調べることである。
手法:脳波記録法を用いて、ウィリアムズ症候群の35歳以上の11人の成人が安静時に目を閉じた状態(閉眼時)と目を開けた状態(開眼時)における皮質の電気的活動を記録し、暦年齢を一致させた定型発達をした成人13人及び言語的精神年齢を一致させた定型発達をした子ども10人と比較した。分散の混合設計分析(mixed-design analyses of variance (ANOVA))を用いて、アルファ波全体(8-12.5 Hz)、低域アルファ波(8-10 Hz)、高域アルファ波(10-12.5 Hz)、ベータ波(13-29.5 Hz)という各帯域に注目して分析を行った。これらの帯域は注意や抑制のプロセスに有意な機能を有していると考えられているからである。
結果:ウィリアムズ症候群と暦年齢一致グループの間で、すべての分析結果においてアルファ波のパワーには有意な差は見られなかったが、ウィリアムズ症候群の患者はアルファ波のパワーが数値的に低い傾向が見られ、これはADHD(注意欠陥多動性障害)などの注意や抑制に障害を有することを特徴とする他の発達障害にみられる傾向と一致する。対照的に、ウィリアムズ症候群と暦年齢一致グループとで閉眼時/開眼時におけるベータ波のパワーを比較したところ、脳波の基本的特性は注意プロセスをうまく実行できていることと整合性が取れている。ただし、サンプル数が少ないことに影響されている可能性に注意する必要がある。さらなる分析結果によれば、ウィリアムズ症候群グループの脳波の基本的特性の変異性が著しく低い傾向が明らかになったが、これは行動面で観察されている典型的な多様性とは矛盾する。
結論:ウィリアムズ症候群のグループにおける脳波スペクトルの変異性が低いというこの新たな発見は、これまでADHD患者の行動面の不得手さに関連していて、とても示唆に富んでいる。さらに、ウィリアムズ症候群患者の脳波プロフィールの変異性が低いことが彼らの行動や認知プロフィールにどのように表れているか、その役割を明らかにするための研究に焦点を当てている。
(2021年5月)
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