ウィリアムズ症候群モデルではオキシトシン受容体の活性化は連合恐怖欠如を仲介しない



Oxytocin receptor activation does not mediate associative fear deficits in a Williams Syndrome model.

Nygaard KR(1)(2), Swift RG(1)(2), Glick RM(1)(2), Wagner RE(2), Maloney SE(2)(3), Gould GG(4), Dougherty JD(1)(2)(3).
Author information:
(1)Department of Genetics, Washington University in St. Louis.
(2)Department of Psychiatry, Washington University in St. Louis.
(3)Intellectual and Developmental Disabilities Research Center, Washington University in St. Louis.
(4)Department of Cellular and Integrative Physiology, University of Texas Health San Antonio.
Genes Brain Behav. 2021 May 12:e12750. doi: 10.1111/gbb.12750. Online ahead of print.

ウィリアムズ症候群は学習障害や不安症や恐怖症の増大や超社会性などを含む特異的な行動表現型を呈する。これらの表現型の中のいくつかを駆動する基礎的メカニズムは解っていないが、患者においてオキシトシンの血中濃度が高くなっているとともにオキシトシン受容体の発現が変異していることを明らかにした研究があることから、オキシトシン調節不全が含まれているという仮説がある。ウィリアムズ症候群の半接合欠失をモデル化した「完全欠失」マウスは、ヒトに診られる表現型の多くを再現する。この完全欠失マウスは統制した恐怖課題における恐怖反応に障害を示す。そこで我々はオキシトシンの調節不全が連合恐怖記憶反応の障害の原因であるかどうかの調査に取り組むことにした。完全欠失マウスではオキシトシン受容体遮断薬を直接中枢神経に送達しても条件付けの減弱や紐付けられた恐怖記憶反応を改善することはできなかった。このようにオキシトシンの信号増幅はこの発現型に実際に影響を与えてはいない。同時に我々は野生株と完全欠失マウスの両方に対してオートラジオグラフィーを使用して、恐怖学習、記憶、社会性に関連する領域におけるオキシトシン受容体とセロトニン輸送体の利用状況を調べた。相関抵抗に差はなかったが、さらに調査すべき領域を特定した。外側中隔核におけるオキシトシン受容体の有意ではない減少、および 線条体と眼窩前頭皮質におけるセロトニン輸送体の利用性の有意ではない低下がみられた。これらのデータを合わせて考えると、ウィリアムズ症候群モデルマウスにおける恐怖状況の異常は、ウィリアムズ症候群遺伝子座の欠失を原因とするオキシトシン作動性システムの変異とは独立していることを示唆している。

(2021年5月)



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