ダウン症候群とウィリアムズ症候群における空間能力の批評的レビュー:すべての空間が同じように構築されているわけではない
A Critical Review of Spatial Abilities in Down and Williams Syndromes: Not All Space Is Created Equal.
Banta Lavenex P(1)(2), Lavenex P(2).
Author information:
(1)Faculty of Psychology, UniDistance Suisse, Brig, Switzerland.
(2)Institute of Psychology, University of Lausanne, Lausanne, Switzerland.
Front Psychiatry. 2021 May 28;12:669320. doi: 10.3389/fpsyt.2021.669320. eCollection 2021.
ダウン症候群(21番トリソミー)とウィリアムズ症候群は、軽度から中程度の知的障害を有する一方で特異的な認知プロフィールを伴う2種類の遺伝子起因の神経発達疾患である。本レビューは、ダウン症候群とウィリアムズ症候群の成人患者において実世界の空間学習と記憶能力を特徴づける最近我々が行った研究に関して議論する。被験者がその内部を自由に動き回れて、基本的な自己中心的(身体中心あるいは視点に依存する)空間能力と他者中心的(世界中心あるいは視点に依存しない)空間能力を探索するためのすべての感覚様相から得られる干渉性の入力にアクセスできる複数の異なるパラダイムを用いた。この結果から、ダウン症候群の被験者は低解像度の自己中心的あるいは他者中心的空間学習や記憶能力が、精神年齢範囲が同じで定型発達をした子どもたちと同程度であることが判明した。それと比較して、ウィリアムズ症候群の大部分の被験者は反応学習の促進を示すものの、彼らの低解像度の他者中心的空間学習や記憶能力は定型発達した子どもやダウン症候群患者に比べて重度に障害を受けていた。これらの発見と他の研究室で行われた実世界や仮想現実パラダイムを用いた研究結果を合わせて考えると、ダウン症候群の大部分の患者が自分の置かれた環境の中を進むにあたっては、個々の目印を統合しない自己中心的ルート学習方法か、異なる位置関係(例:認知マッピング)をコードする低解像度他者中心的空間表現のどちらかの方法を用いていることを示唆している。対照的にウィリアムズ症候群の大部分の患者は環境の低解像度他者中心的、あるいは立体配置的な表現を構築することや利用することができないことから、経路を学習するための指針として視覚的あるいは言語的にコード化した目印を利用している可能性がある。最後に、このように異なる空間処理の元になっている主要な神経構造を議論し、比較的維持されているあるいは障害を受けている特定の脳領域が、これらの神経発達疾患の患者に見られる独特な認知プロフィールをどのように生じさせているかの説明を試みる。
(2021年7月)
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