読字能力獲得における障害を説明する要素:ウィリアムズ症候群の事例
Factors Explaining Deficits in Reading Acquisition: The Case of Williams Syndrome.
Pezzino AS(1), Marec-Breton N(2), Gonthier C(2), Lacroix A(2).
Author information:
(1)Ventilatory Handicap Research Group (GRHV), University of Rouen Normandy, France.
(2)Psychology Laboratory Cognition, Behaviour and Communication (LP3C), University of Rennes, France.
J Speech Lang Hear Res. 2021 Sep 14:1-15. doi: 10.1044/2021_JSLHR-19-00404. Online ahead of print.
目的:ウィリアムズ症候群などの遺伝子疾患を含む読字障害を有する患者における読字能力獲得に複数の要素が影響を与えている。口語言語には比較的強みを発揮するにも関わらず、ウィリアムズ症候群の患者は知的障害を有し、読字に関連する分野に障害を有する傾向がある。彼らの読字能力には実質的にかなりのばらつきがある。音素的障害が読字障害の原因になっているという仮説を述べる著者がいる一方で、他の著者は視空間障害に起因することを示唆している。本研究は、フランス語を話すウィリアムズ症候群の子供や成人における読字能力を徹底的に説明することを試みる。いくつかの要素がウィリアムズ症候群の患者が一単語の特定を行う際の成績に影響を与えているという仮説を検証することを目的としており、特に音素認識と視空間能力の役割に注目した。
手法:被験者はフランス語を話すウィリアムズ症候群の成人29人と、非言語精神年齢と読字レベルを一致させた192人の対照群である。我々は、読字(デコードと単語認識)、語彙(表出と受容)、音素と視空間能力などを評価するテストを実施した。合わせて暦年齢と非言語推論能力の統制も行った。
結果:ウィリアムズ症候群のグループでは一単語の特定においては音素認識が最も精度が高い予測因子だった。視空間能力も影響を与えてはいるが、他の要素以上の、あるいはそれを超えるレベルではない。さらに広く考えると、推論能力もウィリアムズ症候群における一単語の特定能力のばらつきを説明できる可能性があるが、暦年齢や語彙を一致させた対照群ではこの事象は見られない。
結論:読み能力を獲得しているかどうかには関わらず(either readers or prereaders)ウィリアムズ症候群の成人には有意な不均一性が存在する。同様なプロフィールは他の特定の学習障害の患者集団でも見られることから、読字能力の大きなばらつきはウィリアムズ症候群独特の神経心理学的特徴に起因するものではないことが示唆される。ウィリアムズ症候群の読字障害を引き起こす複数の要素に対する多次元的な取り組みについて議論する。
(2021年9月)
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