言語発達障害、ウィリアムズ症候群そして定型発達の子どもにおいて、身振りと言葉の統合は語彙スキルと関連している
Gesture-speech integration is related to vocabulary skills in children with developmental language disorder, Williams syndrome and typical development.
Rombouts E(1), Leenen L(2), Maes B(3), Zink I(1).
Author information:
(1)Department of Neurosciences, Experimental Otorhinolaryngology, KU Leuven, Leuven, Belgium.
(2)Speech-Language Pathology & Audiology Sciences Master Program, KU Leuven, Leuven, Belgium.
(3)Parenting and Special Education Research Group, KU Leuven, Leuven, Belgium.
Int J Lang Commun Disord. 2022 Aug 29. doi: 10.1111/1460-6984.12780. Online ahead of print.
背景:言語発達障害あるいはウィリアムズ症候群の患者は定型発達の子どもに比べて身振りをより多く使うと報告されている。しかし、この2つのグループは視空間スキルや言語スキルにおいて有意に異なっており、この2つのスキルは身振りを使う割合を規定するという仮説がある。
目的:最初の実験は、言語発達障害やウィリアムズ症候群の子どもが実際に身振りを多用するかどうかを調べる。次に、補助的な身振り(例:特有の意味を有する)を利用する際の語彙や視空間スキルの役割を解明する。被験者の多様性を説明するために、グループ間の比較と共に、語彙と視空間スキルは個人レベルでも分析した。3番目の目的として、視空間スキルの役割を、空間的意味を有する身振りとの関係性においてさらに調査した。
方法と手順:横断的グループ設計として、3種類の被験者グループが漫画を読み、続いてその内容を語った。グループは、定型発達の子ども(n=25)、言語発達障害の子ども(n=25)、ウィリアムズ症候群の子どもや若い青年(n=14)から構成されている。彼らの語りは文字として記録し、手の身振りは身振りと言葉の統合(冗長、特定の語彙要素に意味を付加、言葉にはまったく含まれない情報の提供)と空間的内容に基づいてコード化された。
成果と結果:グループ間の比較では、言語発達障害とウィリアムズ症候群の患者は実際に身振りを多用した。ポアソンの対数線形モデルを持いて、表出語彙スキルが低いほうが補助的身振りを比較的より多く使用することを示した。補助的身振りや空間的身振りの使用率は、グループ間の違いにも視空間スキルの違いにも関係は見られない。
結論と意義:神経発達障害か定型発達かの違いに関係なく、補助的身振りの多用は表出語彙スキルに影響されていた。語彙スキルが低い子どもは、彼らが有する言語的発話には存在しない成分を表現する際にマルチモーダルなコミュニケーション方法を自発的に利用していた。この発見は、潜在的な身振りのモデルがこれらの疾患を有する子どもたちに身振りを使うことを後押しできるかどうか、さらにこれによってさらに高度な言語的複雑性を身に着けられるかどうかを調べるような、今後の身振りに関する治療研究の出発点になることを約束する。方法論的な注釈としては、観察されたグループ間に存在するスキルの変異性は、グループ間の比較を行う際には個人レベルのスキルを考慮に入れた相関補正を行うべきであることを示している。
この論文が付け加えること:言語発達障害やウィリアムズ症候群の子どもは、定型発達の子どもに比べて身振りを使う頻度が高い傾向にあることはこれまでに知られていた。定型発達した成人を対象にして行われた研究は身振りの利用における語彙や視空間スキルの役割に注目していたが、非定型発達をした子どもにおいて、これらのスキルが身振りの利用をどのように形作っているかは明らかになっていない。本研究では上述した3つの集団での発話では表現されていないような意味を有する身振りの表出割合を比較しており、そこで得られた知見を本論文が新たに付け加えた。グループ間の差異、個人的語彙スキル、視空間スキルを包括的な統計モデルに包含したことが新規性である。この研究の潜在的あるいは顕在的臨床意義はどのようなものであろうか? 話を置き換える身振りの利用に対する傾倒は語彙スキルに関連する。身振りに関する治療を考慮する際には、視空間スキルは役割を持っていないと思われるので必要な要素として考慮すべきではない。身振りがどのように特定のスキルに関連しているかを知ることは、身振りに対する治療がどのようにして言語生成を支えているかを理解する最初の一歩である。
(2022年10月)
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