自閉スペクトラム症児及びウィリアムズ症候群児の情動理解の発達



Development of emotion comprehension in children with autism spectrum disorder and Williams syndrome.

Author information:
池田 彩夏(1)(2), 白野 陽子(2)(3), 浅田 晃佑(4), 池田 尚広(5), 山形 崇倫(5), 平井 真洋(2)(5)(6)
(1)専修大学 人間科学部
(2)自治医科大学 先端医療技術開発センター
(3)慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート
(4)東洋大学 社会学部
(5)自治医科大学 医学部小児科学
(6)名古屋大学 大学院情報学研究科心理・認知科学専攻
Autism Res. 2023 Nov 16. doi: 10.1002/aur.3053. Online ahead of print.

定型発達をした子どもの情動理解の発達は研究対象として光があたってきたが、非定型発達をした子どもの情動理解はほとんど解っていない。そこで、本研究は感情理解テスト(Test of Emotion Comprehension)を用いて非臨床の子どもと自閉スペクトラム症児及びウィリアムズ症候群児の情動理解の発達軌跡を調べた。我々はテストを行い、(I)表情による情動の認知、(II)情動の外部要因、(III)要求に基づく情動、(IV)信念に基づく情動、(V)現在の情動状態に対するリマインダーの影響、(VI)経験した情動の制御、(VII)情動状態の隠蔽、(VIII)混在した情動、(IX)道徳的情動に対する子どもたちの理解を測定した。ベイズ統計モデリング手法を用いて、各症候群グループ間の情動理解の発達軌跡を比較した。その結果から、非臨床の子どもとウィリアムズ症候群児は情動理解の特定の側面において有意に異なる発達軌跡を描くが、自閉スペクトラム症児は非臨床の子どもと非常に似通った経路を通ることが示された。自閉スペクトラム症児と非臨床の子どもは、成熟するにつれて情動理解の各要素を徐々に理解していく発達過程をたどる。しかし、要求に基づく情動や情動状態の隠蔽や道徳的情動などいくつかの理解の要素に関して、自閉症スペクトラム指数(Autism Spectrum Quotient)の得点を見るとウィリアムズ症候群児は影響を受けている。本研究は自閉スペクトラム症児およびウィリアムズ症候群児の情動理解の発達を評価する初めての研究のひとつであり、障害の本質に対する理解や、介入プログラムの開発を促進することに関して重要なヒントを提供する。

(2023年11月)



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