幼少のウィリアムズ症候群患者における内在化及び外在化症状とその家族環境との関連:縦断的研究



Internalising and Externalising Symptoms and Their Association with the Family Environment in Young Children with Williams Syndrome: A Longitudinal Study.

Ilic T(1), Porter MA(1), Reeve JL(1).
Author information:
(1)School of Psychological Sciences, Macquarie University, Balaclava Road, Marsfield, Sydney, NSW 2109, Australia.
Children (Basel). 2023 Oct 23;10(10):1717. doi: 10.3390/children10101717.

ウィリアムズ症候群は生涯にわたって精神病理症状の発症頻度が高い。しかし、ウィリアムズ症候群患者における内在化及び外在化症状の早期における縦断的軌跡やその家族環境との関連に関してはほとんど解っていない。ウィリアムズ症候群(n=16; 年齢 2歳2か月から9歳5か月)と定型発達(n=46; 年齢 2歳2か月から11歳1か月)の子どもを対象に「子どもの行動チェックリストと家族環境尺度(the Child Behaviour Checklist and the Family Environment Scale)」を、2.5年以上の間隔を空けた2時点で両親に報告してもらって評価した。ウィリアムズ症候群と定型発達のどちらの子どもでも、平均的に見て両時点で「子どもの行動チェックリスト」や精神病理的プロフィールには統計的に有意な精神病理的変化は見られなかった。しかし、信頼できるスコアの変化によれば、ウィリアムズ症候群の子どもは「子どもの行動チェックリスト」のスコアに関してかなりのばらつきがあることが判明している。横断的に見た場合、ウィリアムズ症候群グループは定型発達した対照群に比べてどちらの時点でも「子どもの行動チェックリスト」の大部分の下位尺度において高いスコア(すなわち、より精神病理的であることを反映している)を示しており、ウィリアムズ症候群の子どもの56%‐68%で確認される総合的精神病理障害の上昇(対して、定型発達した対照群では8%)を伴っている。精神病理症状はウィリアムズ症候群において性別、暦年齢、認知能力には無関係である。家族環境における葛藤はウィリアムズ症候群グループの時点1において注意障害の発生率の高さと正の相関がある一方で、定型発達グループは両時点における家族環境の葛藤と総合的精神病理障害の間の相関と、時点2における家族の結束と総合的精神病理障害の相関が見られる。家族環境は、ウィリアムズ症候群グループにおける知的活動や文化的活動に対する関与が低いことを除けば、両グループで差はない。本研究の知見によれば、ウィリアムズ症候群の子どもにおいて時間と共に内在化及び外在化障害の変化が明らかになり、これはウィリアムズ症候群の精神病理に対しては環境影響より生物学的影響のほうが大きいことを示している。

(2023年12月)



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