小児における言語レジスタ理解の発達過程:定型発達児、自閉症児、ウィリアムズ症候群児の比較



Developmental process of the understanding of linguistic register in children: A comparison of typically developing children, autistic children, and children with Williams syndrome.

池田 彩夏 1 2,白野 陽子 2 3,浅田 晃佑 4,池田 尚広 5,山形 崇倫 5,平井 真洋 2 5 6
1)専修大学 人間科学部発達心理学
2)自治医科大学 先端医療技術開発センター
3)慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート未来共生デザインセンター
4)東洋大学 社会学部
5)自治医科大学 医学部小児科学
6)名古屋大学 大学院情報学研究科心理・認知科学専攻
Autism Res. 2024 Aug 21. doi: 10.1002/aur.3219. Online ahead of print.

言語レジスタ(聞き手や社会的状況によって決定される適切な話し方)の発達過程は、定型発達の子どもにおいては徐々に明らかにされてきたが、非定型発達の子どもにおける言語レジスタ獲得のメカニズムや発達過程に関する研究は不十分である。本研究では、定型発達児、自閉症児、ウィリアムズ症候群児の言語レジスタ理解の発達過程を比較し、社会的認知と動機づけが言語レジスタの獲得に果たす役割について検討した。異なる聞き手とコミュニケーションをとる時にどの言語レジスタを使用するか、および話し手のレジスタの使用に影響される聞き手の感情の認識を評価するために2つの実験を設計した。その結果、レジスタと聞き手の関連性を理解するプロセスは、すべてのグループの子どもたちでほぼ同じであり、彼らの理解は年齢とともに向上することが明らかになった。逆に、レジスタの選択が聞き手の感情に及ぼす影響についての理解は様々であった。重要なことは、定型発達の子供が成熟するにつれて、不適切なレジスタを使って話しかけたときに大人の聞き手が否定的に感じる可能性があることに気付くようになるのに対し、自閉症の子供とウィリアムズ症候群の子供は同じ気付きを示さないことである。私たちが得たこの結果は、非定型的な社会的認知と動機付けがレジスタと聞き手の関連性の理解を妨げないことを示唆している。しかし、社会的認知と動機付けは、レジスタ選択が聞き手の感情に及ぼす影響を理解する上で重要な役割を果たす。これらの知見は、言語レジスタ獲得のメカニズムの解明に大きく貢献するものである。

(2024年8月)



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