脳進化における抑制系:神経発達障害における脆弱性の経路
Inhibitory Systems in Brain Evolution: Pathways of Vulnerability in Neurodevelopmental Disorders.
Hanson KL(1)(2), Greiner DMZ(3), Schumann CM(1)(2), Semendeferi K(3).
Author information:
(1)Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, UC Davis School of Medicine, Sacramento, California, USA.
(2)MIND Institute, UC Davis School of Medicine, Sacramento, California, USA.
(3)Department of Anthropology, University of California San Diego, La Jolla, California, USA.
Brain Behav Evol. 2024 Aug 13:1-20. doi: 10.1159/000540865. Online ahead of print.
背景:霊長類の脳の進化は、感覚系ならびに社会的行動と認知を生み出す特異化の根底にある主要な構造と回路の再編成によって特徴付けられる。これらの中で、前頭前野の拡張と生成は、線条体や扁桃体を含む皮質下構造の接続性の変化と組織化を伴っている。これらの構造体は実行機能、抑制性行動制御、および我々の系統に見られる社会感情的認知の高度な側面の根底にある。細胞レベルで見れば、霊長類の脳では、抑制性GABA作動性介在ニューロンの多様性と数がさらに増加している。有力な仮説は、脳内の興奮性活動と抑制性活動のバランスの乱れが、多くの神経発達障害および精神障害の病態生理学の根底にあるとしている。
概要:このレビューでは、抑制性脳システムと回路の進化に焦点を当て、GABA作動性回路の最近の進化的変化が、異常な神経発達に対する脆弱性の基盤をなす可能性があることを示唆する。さらに、霊長類とヒトの社会組織と生活史の変化が、どのようにしてニューロダイバージェンス及び神経発達障害の起源に寄与する方向で脳の発達を形成するかについても議論する。
主要なメッセージ:多くの脳系では、哺乳類、霊長類、およびヒトの脳で機能的な再編成が見られた。前頭線条体および前頭扁桃系における抑制性回路の変化が、社会的行動や認知の変化を支持する。抑制性システムの複雑さの増大は、自閉症や統合失調症などの神経発達障害や精神障害に対する脆弱性の根底にある可能性がある。ウィリアムズ症候群で観察された変化は、抑制系の変化が行動や認知の変化につながるメカニズムをさらに解明する可能性がある。神経免疫機能の変化や、抑制性細胞やシナプスの加齢に伴う脆弱性などを含む発達過程は、神経発達障害や精神疾患の症状の悪化につながる可能性がある。
(2024年10月)
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