ウィリアムズ症候群の特長的な神経学的プロファイル
Distinct Neurological Profile in Williams syndrome.
Pober B, Szelely A
Department of Genetics, Yale University School of Medicine
"Program and Abstracts" of 8th International Professional Conference On Williams Syndrome, Page 48
ウィリアムズ症候群は複数の遺伝子を含む染色体微少欠失を原因として発生する。欠
失遺伝子には脳に特異的に発現するものが含まれている。しかし、医学文献においてはウ
ィリアムズ症候群の神経学的問題はほとんど注目されていない。我々は年齢範囲が6才か
ら49才(平均年齢22才)のウィリアムズ症候群被験者51人(女性32人、男性19人)に
ついて完全な神経学的評価を行った。経験豊かな神経学者を含む著者らは45分間におよぶ
神経系に関する神経学的検査と神経学的テストを実施した。
最も注目される発見は大脳の機能障害などに代表されるさまざまな異常である。被験
者の50%以上から目の動きの制御異常(目の運動調整困難・サッカードの異常(Abnormal
saccades)・痙攣状の追視)がみられ、運動調整困難・協調運動困難・拮抗運動反復困難・
運動失調は70%以上にみられた。興味深いことに、すばやい交互運動が苦手だと言われて
いた被験者の多くが、リズムに合わせたタップ動作を比較的上手に披露していた。これ以
外に共通的にみられた神経学的異常としては病理学的反射に関する反射亢進(被験者の
70%)が挙げられる。大脳の機能障害や反射亢進に代表されるいくつかの神経学的徴候は10
代の青年や若い成人に最もよくみられる。姿勢の不安定性・安静時のふるえ・前頭解放徴
候(frontal release signs)は年齢が高い成人に多い。
MRIによるキアリ奇形I型が5人の患者に見られ、そのうちの3人はキアリ奇形I型の
特徴である症状(頭痛・視覚障害)や神経学的徴候(弱気・衰弱・感覚損失・上肢の腱反
射減少)がある。残りの被験者の20%近くにも症状がみられ、すくなくとも1つはキアリ奇
形I型のスクリーニングにかかるような徴候を持っている。
われわれのデータによれば、ウィリアムズ症候群の患者は明らかな大脳機能障害と年
齢に依存する徴候変化に代表される特徴的なパターンの神経学的異常をみせる。これらの
知見は臨床的治療の手助けとなると共に、ウィリアムズ症候群責任領域に存在するCNS特
異的遺伝子によって引き起こされた神経学的処理異常に対する洞察を与えてくれる。
(2001年7月)
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