相貌認知の特殊性と生得性



永井知代子
東京女子医大
失語症研究21(2):133-141,2001

相貌認知の特殊性について,相貌失認とWilliams症候群研究の立場から言及した。まず相 貌失認に関しては,モーフィングによる合成顔画像を用いた新しい相貌認知検査の結果か ら,相貌失認では相貌弁別精度が著しく低いが,一方でより類似した顔を似ていると判断 する傾向は健常者同様であることを示した。これはカテゴリー知覚を反映しており,相貌 失認の障害レベルが専門性で規定される可能性を示唆する。近年のfMRI研究ではこの可能 性を支持する所見も得られており,従来の相貌認知特殊説に疑問を投げかけている。また, Williams症候群は障害が顕著な視空間認知に比して相貌認知が良好であることから顔モジ ュール説を支持する疾患とされてきたが,全体情報ではなく部分情報から認知していると の報告もあり,認知の方法自体が正常とは異なる可能性が指摘されている。このように, 相貌認知は特殊である,と断言するにはまだ克服すべき問題が残されている。

(2001年9月)



目次に戻る