ウィリアムズ症候群:一次視覚野にあるニューロンの大きさと充填密度
Williams syndrome: neuronal size and neuronal-packing density in primary visual cortex.
Galaburda AM, Holinger DP, Bellugi U, Sherman GF.
Beth Israel Deaconess Medical Center, 330 Brookline Ave, Boston, MA 02215.
agalabur@caregroup.harvard.edu
Arch Neurol 2002 Sep;59(9):1461-7
背景:
ウィリアムズ症候群は発生頻度が少ない遺伝子起因の症候群であり、7番染色体(7q11.23)の片側欠失を伴い、体腔・脳・認知などに独特の症状が発生することが特徴である。ウィリアムズ症候群の患者は珍しく一様ではない神経心理学的プロフィールを示す。その特徴は認知と空間視能力に障害があると同時に言語能力が維持され顔貌認知能力が優れている。
目的:
これらの発見から、脳半球の背側部分が腹側部分に比べて優位になる疾患、視覚野辺縁部分の皮質における表現がが中枢部の表現より優先するという疾患を含む神経解剖学的仮説が立てられている。またこの仮説は、大細胞視覚経路(magnocellular visual pathways)のほうが小細胞経路(parvocellular pathways)よりも優位になる疾患も含まれている。
被験者:
ウィリアムズ症候群患者3人(男性1名、女性2名。平均年齢[標準偏差]は44[14]歳)と年齢と性別を一致させた対照群(男性1名、女性2名。平均年齢は43[11]歳)の献体から得られた6個の左右脳半球の一次視覚野(第17野)を調査した。
方法:
U層・V層・WA層・WB層・WCα層・WCβ層・X層・Y層にあるニューロンを対象に、光学的解剖方(optical dissector method)を利用して充填密度・大きさ及びその分布状況に関してウィリアムズ症候群と対照群に差があるかどうかを調査した。
結果:
ウィリアムズ症候群の脳にある視覚野辺縁(peripheral visual cortex)には異常が見られたが、大細胞の分布(magnocellular subdivisions)には異常はなかった。細胞充填密度については、W層の交互作用、左半球のW層と診断された交互作用が見られた。(There was a hemisphere by layer IV interaction and a layer IV left hemisphere and diagnosis interaction in cell-packing density)。ウィリアムズ症候群の脳は左半球のWCβ層で細胞充填密度が高く、左半球のWA層・WCα層・WCβ層・X層・Y層で小さなニューロンが多い。
結論:
ウィリアムズ症候群の視覚野辺縁において、左半球のいくつかの層では有意に小さなニューロンが高い密度で詰めこまれているという細胞計測上の違いが見られた。細胞の充填密度と大きさの相違はこの症候群における空間視能力障害と関連している可能性がある。
(2002年9月)
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