ウィリアムズ症候群における聴覚認知の神経相関:機能的MRIを使った研究



Neural correlates of auditory perception in williams syndrome: an FMRI study.

Levitin DJ, Menon V, Schmitt JE, Eliez S, White CD, Glover GH, Kadis J, Korenberg JR, Bellugi U, Reiss AL.
Department of Psychology, McGill University, Montreal, Quebec, H3A 1B1, Canada
Neuroimage 2003 Jan;18(1):74-82

神経発生発達障害であるウィリアムズ症候群は高次皮質機能にめずらしい分画があることを特徴としている。特定の複合的知性(言語・音楽・相貌認知・社会性)が選択的に維持されている一方で、その他の認知機能(推論・空間認識・微細運動協調・計算・問題解決)には注目に値する重度の障害がある。また、ウィリアムズ症候群の人は聴覚過敏症に悩まされ、音楽やある種の雑音に対して過度の情動反応があることも知られている。我々は機能的MRI(functional magnetic resonance imaging)装置を使って、ウィリアムズ症候群患者と年齢を一致させた対象群に対し、が音楽や雑音を聞くときの聴覚処理の神経的基盤を調査し、両者の神経機構パターンが健著に異なっていることを発見した。正常な人が音楽や雑音を処理する領域(側頭上部や中部側頭回)はウィリアムズ症候群の被験者では目だった活動が見られなかった。その代わり、ウィリアムズ症候群の被験者では、側頭葉での活動が減少すると同時に右扁桃体で健著な活動が見られた。さらにウィリアムズ症候群の被験者(対照群には見られないが)は音楽を処理する場合、脳幹を含む皮質及び皮質下構造に広い範囲でネットワーク状に分散した活動が見られた。ウィリアムズ症候群の患者に対して初めて機能的MRIを使って行った本研究の成果をこれまでに行ったERP及び細胞構築的研究結果と合わせて考えると、正常な人とは異なりウィリアムズ症候群患者の独特な神経機能構成に関する新たな事実を提供している。そしてこの結果は彼等の音に対する異形反応を説明できる可能性がある。本研究結果はウィリアムズ症候群における遺伝子・脳・認知・行動を結びつけている関係を描き出す重要な第1歩である。

(2003年1月)



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