数えることの基礎は何か? 言語及び視空間能力が数に関する正常な発達と異常な発達に影響を与えている。
What makes counting count? Verbal and visuo-spatial contributions to typical and atypical number development.
Ansari D, Donlan C, Thomas MS, Ewing SA, Peen T, Karmiloff-Smith A.
Neurocognitive Development Unit, Institute of Child Health, University College, 30, Guilford Street, WC1N 1EH, London, UK
J Exp Child Psychol 2003 May;85(1):50-62
ウィリアムズ症候群は、言語認知能力が比較的高く、非言語認知能力に重い障害があることに特徴がある。ウィリアムズ症候群においては数認知にも重大な障害があり、逸話的な報告が行われている。しかし、その本質は体系的に調査されていない。本研究では、14人のウィリアムズ症候群患者(平均年齢7歳2ヵ月)、個々の視空間認知能力を一致させた14人の正常に発育した健常児からなる対照群(平均年齢3歳5ヵ月)、多数の正常に発育した健常児からなる対照群(平均年齢3歳4ヵ月)に対し、組の量(基数原理:cardinality principle)を正確に数えて認識する能力を評価するために2種類の課題を使って検査を行った。ウィリアムズ症候群においては基数原理理解が健著に遅滞しており、彼等の視空間能力相当の精神年齢から予想されるレベルに留まっている。この臨床的グループでは基数理解の能力差の大部分を言語能力差だけで説明できるが、健常児対照群では視空間能力だけがその差との相関がある。この知見は、健常児は言語能力より視空間能力のほうが基数理解において重要な役割を担っているのに対し、ウィリアムズ症候群のグループではその逆であることを示唆している。
(2003年5月)
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