生後早期にALTE様症状を呈し診断に至ったWilliams症候群の一例
塩谷亜矢1), 井上貴博1), 浦野博央1), 藤生徹1), 丸山憲一1), 吉橋博史2)
群馬県立小児医療センター総合周産母子医療センター新生児科1),
群馬県立小児医療センター遺伝科2)
日本未熟児新生児学会雑誌, 21(3) : 663ページ, 2009年10月
【はじめに】
Williams症候群(WS:MIM #194050)における突然死は過去に報告例があり、心血管病変と関連が推測されているが、原因は明らかではない。今回、日齢2にALTE様症状を呈し、精査の結果WSと診断さした新生児例を経験したので報告する。
【症例】
在胎39週1日、1890gの女児。子宮内胎児発育遅延のため帝王切開で出生。アプガースコア1分後9点、5分後10点。低出生体重児のため前医へ入院。呼吸障害無く日齢1より経口哺乳開始。日齢2、啼泣後に突然心肺停止となり挿管、胸骨圧迫、エピネフリン投与で蘇生し回復した。全身管理と精査のため日齢5に当院へ転院。転院時、昏迷、自発運動の低下、全身性痙攣等高度の神経症状を認めた。超音波検査では末梢性肺動脈狭窄を認めたがその他の心奇形認めなかった。胸部X線、心電図、血液・尿検査等を施行したが感染症や代謝・内分泌疾患等は否定的であった。頭部MRIは低酸素性虚血性脳症の初見を認めた。経過中に特徴的な顔貌(内眼角贅皮、長い人中、厚い口唇)を指摘され両親の承諾を得て染色体検査を施行、FISH法で7q11.23の欠失を認めWSと診断した。意識状態は徐々に改善し自発運動を認めるようになり、日齢62に退院となった。
【考察】
WSと突然死については、過去の報告により一般集団に比べてリスクが高いとされている。心血管病変との関連性が推測されているが病態は明らかにはなっていない。WSは臨床所見が多彩であり新生時期での診断は困難とされており、本症例のようにALTEやSIDS様症状で発見される可能性も考えられた。これからの鑑別の際には、WSも考慮に入れ臨床所見を検討することが重要である。
注:ALTE=apparent life-threatening event:乳幼児突発性危急事態
SIDS=sudden infant death syndrome:乳幼児突然死症候群
(2010年2月)
目次に戻る