ウィリアムズ症候群の患者の麻酔前検査



The Preanesthetic Assessment of The Individual With Williams Syndrome.

By Dr. Lynn White
"Heart to Heart" Volume 15 Number 3 December 1998, Pgae 6

ウィリアムズ症候群の子どもや成人の治療経験者を含めて、医療関係者の間でウィリ アムズ症候群の知名度が向上してきた事により、この症候群に共通的に見られる症状のス クリーニングテストや観察方法を記述したガイドライン作成が行われてきた。ウィリアム ズ症候群の人の多くは、診察に伴うX線やカテーテル検査や手術に際して、鎮静剤の投与 や全身麻酔を受ける。手術の対象は、斜視の矯正・ヘルニア修復・耳管・心臓血管系が多 い。過去5年関に事例報告という形式で麻酔導入過程で問題が発生した事例の詳細が記述 された文献が出ており、特にウィリアムズ症候群の子どもの心臓手術が多い。この結果、 選択された手術の前に行っておくべき種々の手術前スクリーニングに関心が高まっている。 高圧的にならないように注意しながら、自分の子ども特有の問題点に関して両親が麻酔医 に情報を与える事はとても重要である。これは、普通ならば手術の約1週間程度前に行わ れる麻酔前診断の時に行うのが最適である。複数の症状を抱えた患者が手術に先立て適切 な専門化からの助言を基に診察を受けることは、全国の多くの医療機関で普通に行われる ようになっている。ウィリアムズ症候群の子どもや成人の両親や保護者に対してこのオプ ションの申し出が無かった場合は、主治医の内科医にこの種の会合を計画してもらうよう に相談することが理想である。理想的には、主治医は通常の通院時のカルテを含めて患者 のすべての診療記録をまとめ、その患者の関係者全員が利用できるようにすべきである。 しかし、大抵の場合大切なデータを集める責任は両親に降りかかってくる。このためには 手術に先立って何が重要な要素であるかを知っておくことが大切である。

麻酔医が特別に関心を持つ問題は、患者の循環器系・腎臓機能・気道の解剖学的状態・ 代謝状況・関節可動・認知機能レベル等である。

これらを個々に考慮するが、循環器系が最初で最重要な課題である。心臓・大動脈・ 血圧の問題がウィリアムズ症候群では特に多い。そのために、手術の前一年以内に心臓病 検査をすることが望ましく、心臓専門医からの記録を麻酔医がレビューすることが必要で ある。心電図・心エコーの結果・胸のレントゲン写真(可能ならば)心臓カテーテルの結 果(必要に応じて)が提供されるべきである。ウィリアムズ症候群の気道に関する問題は、 全身麻酔用の気管内チューブを設置する際に、ウィリアムズ症候群の人は下あごの発達が 悪いために問題がある場合が出る事である。歯がもろい、あるいは欠損歯の存在もこの問 題に関係する。これらの特徴は、麻酔医が手術前に簡単で部分的な身体検査を行う時に伝 えると良い。患者の知的感情的特質は手術前の薬物療法や、時には、麻酔導入方法を決め る事にも使われる。ウィリアムズ症候群の人の不安を静めるために、両親から手に入る情 報は役に立つ。

腎臓機能検査や泌尿器系疾病の記録も参考にするべきである。カルシウム錯乱 (Calcium derangements)は泌尿器系疾病と関連している可能性があり、カルシウム検査(可 能ならばその人のもの)が提供されなければいけない。動きの制限を含む関節構造も、手 術中の姿勢や補助具の設置に関して事前に注意を与える為に必要である。本人や家族の麻 酔に対する異常反応の経験は強調すべきである。ウィリアムズ症候群の人については、以 前受けた手術や麻酔への反応の経歴はとても役に立つ。薬に対する異常反応は報告してお くべきであり、現在飲んでいる薬のリストも提供する必要がある。

ウィリアムズ症候群の人の病歴、最近の専門的検査、研究機関のデータ等の知識を得 て、麻酔医は麻酔やモニター機器を個人個人に適合する様に計画することが可能になり、 起こりうる問題にも対処できる。ウィリアムズ症候群の人の両親や保護者は治療にあたる 内科医にとっての貴重な情報源であり、自分の子どもに安全な治療行為を施す為に関係者 に必要事項を知らしめなければいけない。


リン・ホワイト医師はイリノイ州シカゴにあるラッシュ・プレスバイテリアン・セン トルーク病院(Rush-Presbyterian-St.Ruke Medical Center)の麻酔医である。ホワイト医 師はWSAの医学諮問委員会の一員である。彼女の9歳の娘レベッカ(Rebecca)はウィリアム ズ症候群である。

(1999年7月)

目次に戻る