ウィリアムズ症候群患者における先天性大葉性肺気腫に関する新しい症例報告
A Novel Case Report of Congenital Lobar Emphysema in a Patient With Williams-Beuren Syndrome.
Wong W, Fiorino E.
Chest. 2012 Oct 1;142(4_MeetingAbstracts):1009A.
初めに:
ウィリアムズ症候群は、肺の構造に重要な役割を果たしえいる弾性繊維の構成要素を産出するエラスチン遺伝子を含む染色体欠失を原因として発生する。ウィリアムズ症候群と肺疾患の合併に関しては限られた報告が公開されているが、我々が論文を調べた限りではウィリアムズ症候群患者の先天性大葉性肺気腫に関する症例報告はこれまで行われていない。
症例紹介:
2ヵ月のウィリアムズ症候群と循環器複合病変を有し、外科手術による循環器修復を提示されている男児は、3週間に及ぶ持続的な右上葉無気肺を有することが発見され、肺に関する受診が必要とされた。術前の胸部X線検査では、手術後にも一連の胸部X線検査を必要とする肺右上葉無気肺であることを示していた。循環器手術の最中に、偶発的な右中葉の高度膨脹が認められた。理学的検査の結果、初期には孤立散在性呼気性喘鳴が認められ、この後、突発性頻呼吸、高度膨脹、換気低下が右上葉及び中葉肺領域で認められた。一連の胸部X線検査の結果、徐々に右中葉の高度膨脹が認められてきた。胸部CT検査では顕著な右中葉の高度エアレーションと気腫性変異の可能性が示された。肺胞換気量と肺血流量(V/Q)の測定によって右中葉は換気血流欠陥に相当すること、気管支鏡検査によって右中葉の気管支開口部が小さく潰れていることが示された。その結果、患者は3ヵ月の時点で先天性大葉性肺気腫を治療するために単純肺葉切除術を受けた。病理学的には広汎性肺胞過膨張と肺胞壁の局所的破損があきらかになった。術後検査では高度膨脹の減少と右肺のエアレーションの改善がみられた。
議論:
先天性大葉性肺気腫は稀少な先天性異常であり、一つもしくは複数の肺葉の高度膨脹が特徴である。初期の徴候には頻呼吸、喘鳴、せきなどが含まれる。透過性亢進(hyperlucency)や影響を受けた肺葉の肺気腫、縦隔偏位、隣接構造の圧迫などを元に診断がくだされることが多い。先天性大葉性肺気腫は気管支肺機構の様々な異常発達によって引き起こされる。ウィリアムズ症候群は7q11.23領域にあるエラスチン遺伝子を含む超顕微鏡的欠失によって引き起こされる。複数の研究からエラスチン遺伝子の欠陥は、肺の構造や機能に影響を与え、肺の様々な疾患と関わっていることが示されている。
結論:
先天性大葉性肺気腫とウィリアムズ症候群に対するエラスチン遺伝子の果たす役割と病態生理学を調べるにはさらなる研究が必要である。
(2013年5月)
目次に戻る