ウィリアムズ症候群児の甲状腺片側形成不全とサイロトロピンレベル上昇



Thyroid hemiagenesis and elevated thyrotropin levels in a child with Williams syndrome.

Cammareri V, Vignati G, Nocera G, Beck-Peccoz P, Persani L Divisione di Pediatria, Presidio Ospedaliero M. Melloni, Milan, Italy.
Am J Med Genet 1999 Aug;85(5):491-494

ウィリアムズ症候群の女児がサイロトロピン(TSH)レベルの上昇(7.0 muU/ml)、正常な甲状 腺ホルモン放出濃度、抗甲状腺自家抗体が見られない(absent antithyroid autoantibodies)という症状を示した。甲状腺の超音波診断とシンチグラフィ (scintigraphy)では左葉の形成不全が見られ、逸脱組織は観察されなかった。サイロトロ ピン放出ホルモン(TRH)注射(200 mug/mq, i.v.)に対するサイロトロピン反応は過剰で長引 き、無症状の甲状腺機能減退症を疑わせる。循環サイロトロピンの生物学的活性は正常値 をわずかに下回り(TSH bioactivity (B) to immunoreactivity (I) ratio (TSH B/I) = 0.4, normal:0.6-2.2)、これらの異常は視床下部に原因がある甲状腺機能減退症の患者とよく似 ている。甲状腺機能はウィリアムズ症候群の合併症とは認められておらず、定期的な検査 もされていない。しかし、視床下部−脳下垂体−甲状腺系の異常と甲状腺奇形は他のウィ リアムズ症候群の患者でも発見されている。ウィリアムズ症候群の患者で欠失している染 色体部位に連続している7q11.23の遺伝子マッピンには、ウィリアムズ症候群の複雑な表 現型に寄与する甲状腺の発達に関連する遺伝子が含まれている可能性がある。

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訳者注:

サイロトロピン:
脳下垂体前葉で作られる甲状腺刺激ホルモン
シンチグラフィ:
体内に入れた放射線微粒子を用いた医学的検査器具
(1999年8月)

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