もやもや病を合併したWilliams症候群の麻酔経験



小山 祐介・松三 昌樹・中塚 秀輝・平川 方久
岡山大学 麻酔・蘇生科
麻酔 44巻6号 1995年6月 910ページ

Williams症候群は、elfin faceと呼ばれる特徴的な顔貌、大動脈弁上狭窄(SAS)など の循環系の奇形、ならびに精神および身体の発達遅延を三徴とする先天性疾患である。今 回我々は本症候群の患者に合併したもやもや病に対して行われた、EDAMSの手術の麻酔管理 を行ったので報告する。

症例:
15歳の女児。小学校5年時にWilliams症候群の診断を受けた。平成3年ごろよ り脱力発作がたびたび見られ、平成4年1月、意識消失発作を来し精査の結果、もやもや 病と診断され、平成6年4月EDAMSが予定された。現症として、身体発達遅延および知能 低下が認められ、顔貌に関して、小顎症、鞍鼻、厚ぼったい眼瞼、厚く突出した口唇が見 られた。心エコー上MVP、MRが経度に見られた。麻酔導入はフェンタニール、ミダゾラム を静注ののち、笑気−酸素−イソフルレンにより緩徐導入を行った。導入時の気道確保は とくに問題なく行え、声門直視下に気管内挿管を行った。術中はイソフルレンおよびフェ ンタニールで維持した。術中は両上肢の観血的動脈圧測定を行ったが、右手の比べて左手 の動脈圧が収縮期で15〜20mmHg、拡張期で5〜10mmHg常に低値であった。
考察:
もやもや病を伴うWilliams症候群の患者の全身麻酔にあたってはまず導入時の 気道確保が問題となる。また、ハロセンおよびサクシニルコリンを用いた麻酔導入により、 咬筋強直を認めた本症候群の例が報告されているので、これらの薬物を用いた急速導入は 避けるべきである。また、本症候群で両上肢の血圧に差の見られる例があり、もやもや病 のように、術中厳重な血圧管理を必要とする場合、両方の上肢の観血的動脈圧のモニター が必要と考えられる。
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同じ内容でさらに詳細な報告が、『臨床麻酔 Vol.19/No.2(1995-2) 251〜252ページ』に掲 載されている。

(1999年10月)

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