Williams症候群に合併した中枢性思春期早発症の1例
A case of central precocious puberty associated with Williams syndrome
間宮 範人1)、出口 隆生2)
1) 紀南病院小児科
2) 三重大学附属病院
日本小児科学雑誌 第120巻 第2号 475ページ 2016年2月
【はじめに】Williams症候群(WS)は7番染色体長腕の微細欠失に起因し、幼少期からの成長障害、発達遅滞、妖精様顔貌、人なつっこい性格、大動脈弁上狭窄や末梢性肺動脈狭窄などの心血管系異常を主症状とする症候群である。今回、WS に中枢性思春期早発症(CPP)を合併した1女児例を経験したので報告する。
【症例】9歳女児。1歳6か月より発達遅滞を認めていた。特異的顔貌と人見知りをしない性格からWSを疑われ、染色体検査(FISH法)にてWS責任遺伝子領域の欠失を認め確定診断された。8歳11か月時に乳房発達と陰毛発生に気付き当院を受診した。症状発現時期より身長のスパートも認めており、臨床所見と内分泌学的検査からCPPの確実例と診断した。最終身長の改善目的にLH-RHアナログ製剤による治療を開始した。
【考察】WSにおけるCPP合併の報告は極めて稀で、海外からの女児の初潮時期に関する報告とLH-RHアナログ製剤の効果に関する報告以外は症例報告が中心である。本邦からも1つの症例報告のみである。報告ではWS女児の5〜6人に1人がCPPを発症し、LH-RHアナログ製剤による最終身長の改善が示唆されている。また、LH-RHアナログ製剤の投与はCPPによる心理社会面への影響を軽減することも期待される。本例も今後身長スパートの抑制が得られるか慎重に観察する予定である。
【結語】WSでは二次性徴の出現時期に留意し、必要に応じて内分泌学的な精査・加療を行う必要があると思われた。
訳者注:「WS女児の5〜6人に1人がCPPを発症」が書かれた論文は資料番号3-X-35と思われる。
(2017年2月)
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