回腸ストーマ造設術後にストーマ狭窄・周囲膿瘍・瘻孔形成をきたしたWilliams症候群の一例
馬上 頌子、大原 佑介、榎本 剛史、小川 治、小川 光一、高橋 一広、明石 義正、久倉 勝治、大城 幸雄、倉田 昌直、小田 竜也、大河内 信弘
筑波大学附属病院消化器外科
日本大腸肛門病学会雑誌 第70巻抄録号 2017年10月 第72回学術集会抄録号 A287ページ
【はじめに】Williams症候群は心血管奇形、精神発達遅滞、妖精様顔貌等を特徴とする先天異常である。今回我々はWilliams症候群の患者で、回腸ストーマ造設術後に原因不明の遅発性のストーマ狭窄・周囲膿瘍・瘻孔形成をきたした1例を経験したので報告する。
【症例】44歳女性。Williams症候群・弁膜症にて前医通院中であった。重症心不全にて当院緊急入院となった。入院中にWBC10100/μl、CRP19.20mg/dlと高値を認めた。造影CT検査にてだくらすダグラス窩膿瘍を認め盲腸穿孔が疑われたため、回盲部切除術、回腸双孔式ストーマ造設術、膿瘍ドレナージ術を施行した。術後経過は概ね安定していたが、65PODに、回腸ストーマ排泄口近傍の皮膚接合部が離開し、便汁とガスの排泄がみられた。その後ストーマからの排便が停止したため、造影検査を施行したところ、排泄口が完全閉塞していた。また広汎なストーマ周囲膿瘍をきたし、回腸皮膚瘻を形成した。ストーマ再造設術を考慮したが、重症心不全のため耐術困難と判断した。瘻孔にドレーンを挿入し糞瘻として管理を行ったところ、創部の炎症は改善し、171PODに自宅退院となった。
【考察】ストーマ狭窄・瘻孔は、感染やクローン病などを背景として生じ得る。Williams症候群の消化管合併症については、憩室炎などの報告はあるが、ストーマ関連合併症についての報告は検索しえた範囲で認めなかった。本症例は狭窄・膿瘍・瘻孔を同時に発症したが、具体的にどのような原因、順序で生じたかは不明であった。重症弁膜症のため再手術が不能であったが、糞瘻管理で自宅退院可能となった。
【結語】複雑なストーマの合併症を生じたWilliams症候群の1例を経験した。糞瘻として管理することで低侵襲で治療することができ、再手術困難な症例に有効な方法であると思われる。
(2019年6月)
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