視空間認知障害を有するウィリアムズ症候群児の歩行運動の特徴:三次元歩行運動分析研究
Gait characteristics of children with Williams syndrome with impaired visuospatial recognition: a three-dimensional gait analysis study.
伊藤祐史(1), 伊藤 忠(2), 倉橋直子(3), 越知信彦(4), 則竹耕治(5), 杉浦英志(6), 水野誠司(7), 城所博之(8), 夏目淳(8)(9), 中村みほ(10)(11)
Author information:
(1)愛知県三河青い鳥医療療育センター小児科
(2)愛知県三河青い鳥医療療育センター三次元動作解析室
(3)愛知県医療療育総合センター中央病院小児神経科
(4)愛知県三河青い鳥医療療育センター小児科
(5)愛知県三河青い鳥医療療育センター整形外科
(6)名古屋大学大学院医学系研究科バイオメディカルイメージング情報科学
(7)愛知県医療療育総合センター中央病院小児内科・遺伝診療科
(8)名古屋大学大学院医学系研究科小児科学 城所博之
(9)名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学
(10)岡崎市こども発達医療センター小児科
(11)愛知県医療療育総合センター発達障害研究所
Exp Brain Res. 2020 Oct 14. doi: 10.1007/s00221-020-05946-0. Online ahead of print.
ウィリアムズ症候群は遺伝子に起因する神経発達障害であり、知的障害や視空間認知障害を有することを特徴とする。本研究の目的は視空間認知障害を有するウィリアムズ症候群児の歩行運動の特徴を分析することであり、三次元歩行運動分析を用いて視空間認知障害を補償するために必要な歩行運動適応を明らかにすることである。三次元歩行運動分析を8人の視空間認知障害を有するウィリアムズ症候群児(平均年齢11.8歳)と、年齢・性別・身長・体重を一致させた9人の対照群に対して実施した。臨床データ、基礎的運動テスト、平坦な床を歩く場合やマットの上に歩いて上る場合の歩行運動の変化を二つのグループで比較し、ウィリアムズ症候群児については変数間の相関を分析した。ウィリアムズ症候群児は筋力が弱くなくてもバランス機能に障害を示す。平坦な床を歩く場合、ウィリアムズ症候群児のグループは速度が遅く、歩幅が短く、歩幅の変化度合いが増加し、立脚期を通じて膝の屈曲が増加し、水平方向の骨盤の関節可動域が増加し、歩行偏差指数(Gait Deviation Index)が低く、歩行プロファイルスコア(Gait Profile Score)が高い。これらは歩行運動の質を表す指標である。マットの上を歩く場合、ウィリアムズ症候群児はさらに歩く速度が低下し、矢状面股関節屈曲や遊脚相における足関節背屈の関節可動域が低下した。バランス機能の障害は歩幅の変化度合や遊脚相における足関節背屈の関節可動域の低下と有意に関連していた。視空間認知障害を有するウィリアムズ症候群児の詳細な歩行運動パターンを示す。これらの知見は視空間認知やバランス機能の障害が歩行運動適応に影響を与えていることを示している。
(2020年10月)
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