子どもや青年の特定の遺伝子疾患における自己免疫性甲状腺疾患



Autoimmune Thyroid Disease in Specific Genetic Syndromes in Childhood and Adolescence.

Kyritsi EM(1), Kanaka-Gantenbein C(1).
Author information:
(1)Division of Endocrinology, Diabetes and Metabolism, First Department of Pediatrics, Medical School, Aghia Sophia Children's Hospital, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece.
Front Endocrinol (Lausanne). 2020 Aug 19;11:543. doi: 10.3389/fendo.2020.00543. eCollection 2020.

自己免疫性甲状腺疾患は後天的甲状腺機能異常の最も多い原因の一つであり、橋本病(Hashimoto's thyroiditis)あるいはバセドウ病(Graves' Disease)と表現されることが多い。橋本病は甲状腺特異的な自己抗体、特に共通的に見られる抗甲状腺ペルオキシダーゼ自己抗体が血清中に存在することが特徴であり、甲状腺超音波検査による甲状腺の不均質なエコー像が典型的な症状である。橋本病は正常な甲状腺機能が長く続いたのち、甲状腺機能低下が進行して発症する。バセドウ病は子どもや青年に発生することはさらに少なく、明白な甲状腺機能亢進を呈する。思春期の開始後に、自己免疫性甲状腺疾患は男性に比べて女性に発症する率が高いが、思春期前の時期には女性のほうが明らかに影響を受けやすいというような明確な傾向はない。自己免疫性甲状腺疾患は孤発型、あるいは1型糖尿病、セリアアック病、円形脱毛症、尋常性白斑などその他の自己免疫疾患でも診られる。特に小児野年齢においては、自己免疫性甲状腺疾患が21トリソミー(ダウン症候群)、クラインフェルター症候群、ターナー症候群、22q11.2欠失症候群などの特定の遺伝子疾患とともに診られる割合が、より多い。甲状腺機能異常はプラダー・ウィリー症候群やウィリアムズ症候群等のその他の遺伝子疾でも診ることがあるが、これらの症候群における甲状腺機能異常は甲状腺の自己免疫に起因するものではない。興味深いことに、自己免疫とRas/MAPK経路調節不全の発生学的症候群(RASopathies)の間の関連の可能性を示唆する証拠が出現している。本レビュー論文では、特定の遺伝子疾患における自己免疫性甲状腺疾患の発生率及び臨床症状や付随する病理などを提示するとともに、この疾患を早期に発見した場合の定期的な経過観察を提案する。

(2020年10月)



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