肝臓に共存する異所性アルドステロン産生性腫瘍の疑い例を有するウィリアムズ症候群の1例



A case of Williams syndrome with suspected coexisting ectopic aldosterone-producing tumor in the liver.

馬場 周平1, 三次 有奈1, 小原 慎司1, 臼渕 浩明2, 寺江 聡2, 砂原 正男3, 大島 隆宏3, 三澤 一仁3, 辻 隆裕4, 高橋 文也5, 山�ｱ 有人6, 笹野 公伸6, 和田 典男1
1.市立札幌病院 糖尿病・内分泌内科
2.市立札幌病院 放射線診断科
3.市立札幌病院 外科
4.市立札幌病院 病理診断科
5.北海道大学大学院医学研究院放射線科学分野画像診断学教室
6.東北大学大学院医学系研究科病理診断学教室
Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2020 Sep 23;2020:20-0057. doi: 10.1530/EDM-20-0057. Online ahead of print.

概要:

31歳のウィリアムズ症候群の男性患者は、高血圧、低カリウム血症、および血漿レニン活性比でアルドステロン濃度の高い9年間の病歴をもと主訴に我々の病院を受診した。臨床的に原発性アルドステロン症と確定診断されたが、腹部CTスキャンで副腎に異常な所見は見られなかった。しかし、右肝小葉の後上部に13mmの血管過剰腫瘍が検出された。その後の副腎静脈サンプリング(Adrenal venous sampling)によって、腫瘍を取り巻く肝臓につながる右副腎静脈の拡張支流の存在が明らかになった。さらに区分副腎静脈サンプリングを行うことによって、腫瘍から排出する右上静脈支流における高い血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration)が検出された。腹腔鏡下部分肝切除術を行った。肝臓から組織的に分離された切除腫瘍は、透明な細胞で構成され、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)に対する免疫組織学的陽性が確認された結果アルドステロン産生副腎腺腫と診断された。手術後、患者の血圧、血清カリウムレベル、血漿レニン活性および血漿アルドステロン濃度は正常に戻った。我々の知る限りでは、本症例は原発性アルドステロン症を併発したウィリアムズ症候群の初めての報告である。ウィリアムズ症候群は高血圧の有病率が高いため、ウィリアムズ症候群かつ高血圧の患者を管理する際には原発性アルドステロン症を考慮する必要がある。本症例では、CT所見だけでは副腎遺残腫瘍を区別することができなかった。したがって、我々のケースでは、副腎腫瘍と副腎遺残腫瘍を区別するための区分副腎静脈サンプリングの有用性が強調される。

学習ポイント：

ウィリアムズ症候群は稀少遺伝子疾患であり、数多くの医学的・認知的症状で特徴付けられる。その中で弾性動脈の狭窄および高血圧という全身性の動脈症が特徴である。ウィリアムズ症候群は高血圧の頻度が高い疾患であるが、ウィリアムズ症候群症例におけるレニン−アルドステロン系はまったく研究されていない。ウィリアムズ症候群の患者に高血圧と重度の低カリウム血症、低いPRA(血漿レニン活性)および高ARR(アルドステロン／レニン比)がみられた場合、原発性アルドステロン症の併発を考慮すべきである。副腎遺残腫瘍は迷走性の副腎組織から生じると考えられており、まれに原発性アルドステロン症の原因となる。肝臓の副腎遺残腫瘍 (Hepatic adrenal rest tumor：HART)は、右肝葉の腫瘤を検出する際の鑑別診断で考慮されるべきである。区分副腎静脈サンプリングは、肝臓の副腎遺残腫瘍と副腎腫瘍を区別することに寄与する可能性がある。

（２０２１年１月）



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