定量的顔貌表現型を用いた多様な集団におけるヌーナン症候群とウィリアムズ症候群の客観的識別診断
Objective differential diagnosis of Noonan and Williams-Beuren syndromes in diverse populations using quantitative facial phenotyping.
Porras AR(1)(2), Summar M(3), Linguraru MG(1)(4).
Author information:
(1)Sheikh Zayed Institute for Pediatric Surgical Innovation, Children's National Hospital, Washington, D.C., USA.
(2)Department of Biostatistics and Informatics, Colorado School of Public Health, University of Colorado Anschutz Medical Campus, Aurora, CO, USA.
(3)Rare Disease Institute - Genetics and Metabolism, Children's National Hospital, Washington, D.C., USA.
(4)School of Medicine and Health sciences, George Washington University, Washington, D.C., USA.
Mol Genet Genomic Med. 2021 Mar 27:e1636. doi: 10.1002/mgg3.1636. Online ahead of print.
緒言:ヌーナン症候群とウィリアムズ症候群の患者は、患者の民族的背景を伴う似通った顔貌表現型を呈する。特有の顔貌特徴が報告されてはいるが、先祖の多様性を継承する母集団においてこれらの特徴の発生状況は変化に富むことが研究によって明らかになっている。従って、報告されている顔貌特徴に従って識別診断を行うことが課題である。遺伝子検査によって正確な診断を行うことは可能であるが、発展途上の地域や遠隔地においてこの技術は利用できない。
手法:多様な民族的背景を有する286人のヌーナン症候群患者と161人のウィリアムズ症候群患者の間の最も弁別的な測定基準を特定するために顔貌分析手法を用いた。我々は弁別能力の最も高い測定基準と、全体的及び異なる民族グループ毎の基準の範囲を定量化した。さらに、臨床の際に参照する目的だけではなく訓練も念頭に置いて、母集団に基づいた外見イメージを作成した。最後に、先ほど述べた測定基準を基に全体及び民族に特有の機械学習を行って、ヌーナン症候群とウィリアムズ症候群の患者の識別を行うモデルを構築した。
結果:相互検証を行った結果、全体母集団における分類で85.68%の精度を得た。さらに患者の民族情報を取り入れた顔貌測定基準を適用することで、精度は90.38%まで向上した (p = 0.024)。
結論:我々が行った顔貌分析は、多様な母集団においてヌーナン症候群とウィリアムズ症候群の識別診断のための顔貌測定基準の定量的参照基準を初めて提供した。
訳者注:
アクセスできる論文データベースによれば、本文中に記載された被験者の数はヌーナン症候群患者が161人、ウィリアムズ症候群患者が286人となっている。年齢や民族別の明細の数字を見ればこちらの人数が正しく、緒言の記載が間違っていると思われる。
なお、ウィリアムズ症候群286人の内訳は、49人の乳児、47人の幼児、71人の子ども、28人の青年、91人の成人; 男性が150人で女性が136人、アジア人は26人だった。
アジア人のデータは3-X-165(多様な人種におけるウィリアムズ症候群)を基にしていること(本論文でもウィリアムズ症候群の被験者は286人となっている)から、本論文の対象として日本人は含まれていないと推測される。論文の執筆者も共通している
(2021年4月)
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